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アラベラ
第三幕その四
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てくれたし」
「恨んではいないのね」
「どうして恨むの。お母さんを。私を育ててくれたのに」
「そう、そう言ってくれるの」
 アデライーデはその言葉を聞いて涙を一粒落とした。それは床に落ちてはじけた。
「嬉しいわ。そして神に感謝します」
 そしてズデンカを抱き締めた。
「この様な心優しい娘を私の様な愚かな母に授けて下さったことを」
「お母さん・・・・・・」
 ヴェルトナーはマッテオの方に歩み寄った。そして彼に対して言った。
「娘を頼む」
「はい」
 マッテオは頷いた。
「私の様な者でよければ。彼女を生涯かけて愛することを誓います」
「頼むぞ。私は幸せ者だ」
 ヴェルトナーもそこで涙を落とした。
「二人の素晴らしい娘を持つことができたのだからな。これは自慢になってしまうが」
「いえ」
 マッテオはそこで首を横に振った。
「それは私の言葉です。ズデンカは私にとっては過ぎた人です」
「過ぎた人」
「はい。今までずっと私のことを案じ、愛してくれたのですから」
 そう言いながらズデンカに顔を向けた。ズデンカも彼を見ていた。
「永遠に二人でいよう」
「はい・・・・・・」
 そして二人は再び抱き合った。そして絆が結ばれたのであった。
「これで終わった」
 ホテルの客達はそれを見て安心したように微笑んだ。
「では眠ろう。輝かしい明日の為に」
「ああ」
 彼等はそれぞれの部屋に帰っていく。ヴェルトナーは友人達に対して言った。
「どうやら全てが終わったようです。これからどう致しますか」
「それは決まっております」
 彼等の中の一人がそう言った。
「幸福は祝福される為のもの。違いますかな」
「確かに」
 彼はそれを受けて微笑んだ。
「では行きますか」
「はい。貴方達の娘さん達の祝福を乾杯する為に。朝まで付き合いますぞ」
「それは有り難い」
 彼はそれを受けて喜びの声をあげた。そして妻に顔を向けた。
「では行って来るよ」
「はい」
 彼女はそれを笑顔で送った。
「私は部屋に戻りましょう。そしてズデンカを祝福してあげましょう」
「そうしてくれるか。では私はマッテオ君を誘おう」
「私をですか」
「そうだ。婿を祝うのは舅の務めだからな」
 彼はそう言って微笑んだ。
「有り難うございます」
「では来た前。そして今宵は飲み明かそうぞ」
「はい」
 マッテオはそれに従いヴェルトナーの後に従った。そしてそのままホテルを後にした。
「では明日からはじまる幸福の為に」
 アデライーデはズデンカの手を取った。
「私達は帰りましょう。そして二人でささやかな祝福を」
「お母さん」
 ズデンカは母に従った。そして二人は自分達の部屋に帰って行った。
 残ったのはアラベラとマンドリーカだけになった。
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