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アラベラ
第一幕その二
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「ではお願いします、すぐに」
「わかりました」
「ではあちらに」
 こうしてまた占うことが決まった。三人は別の部屋に移っていった。
「まだ占うのね」
 ズデンコはそれを横目に見ながら呟いた。
「お父さんもお母さんも不安で仕方ないので、本当に」
 それは痛い程よくわかる。彼女もそれで心を痛めているのだ。
「この街から離れたくない。あの人と離れ離れになるなんて」
 彼女もまた何か事情があるようであった。
 そこでまた扉を叩く音がした。
「また請求書かしら」
 彼女は溜息をつきつつ扉に向かった。
「あの、今は」
 帰ってもらうように応対しようとした。だがそこにいたのは借金取りではなかった。
「ズデンコ」
 そこにはオーストリアの軍服に身を包んだ若い男であった。長身でたくましい身体をしており、見事な金髪を後ろに撫で付けている。彫の深い顔に青い瞳が映える。見事な美男子であった。
「マッテオ」
 ズデンコは彼を見て一瞬顔を明るくさせた。だがそれはあくまで一瞬のことであった。
「アラベラはいるかい」
 彼は別の名を口にしたからだ。
「ううん」
 彼女はそれに対して首を横に振った。
「姉さんならリングシュトラーセよ」
「リングシュトラーセか」
「ええ、女性の友達の方とお散歩しに」
「女の人とか。ならいいんだ」
 彼はそれを聞いて少し安心したようであった。
「僕について何か言っていなかったかい?」
「いいえ」
「そうか」
 ズデンコが首を横に振ったのを見て悲しそうに応えた。

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