第8話『新たな高み』
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「ありがとうございます!」
いつもそこらの海賊から奪ってまかなってきたぼろぼろの衣類の上から灰色の、なんとも渋みのある甚平をチョイスして羽織る。胸元からこぼれて見えるぼろぼろの衣類ともなぜかマッチして、それがハントの茶色の髪に映えており、実に良く似合っている。
「……いい男になったもんじゃのう」
じっと見つめたジンベエが感慨深そうに呟く。
それが照れくさかったのか、ハントは頭をかいて誤魔化そうとするのだが、すぐにその動きをぴたりと止める。
「あの……師匠」
「なんじゃ」
「俺が今から退治しようと思ってる海賊のことなんですけど――」
「――その話はせんでええ」
おずおずと話を切り出そうとする言葉を、ジンベエは止めた。
「で、ですけど!」
食い下がろうとするハントに、ジンベエは笑って言う。
「言いづらいなら言わんでええ……お前さんの敵なら何も考えんでええ、ぶっ飛ばして、全部終わらせてからまたその話を聞かせてくれ。わしはそれを全部受け止めよう」
「……っ」
息を呑み「はい!」
ジンベエの言葉を受けて、元気の良い返事とともに深々と頭を下げた。
会話を交え、刻々と時間が過ぎ行き、ハントの出航時間が迫る。
「おっと、忘れるところじゃった……こいつも持っていけ」
「……紙?」
手渡されたのは小さな紙だった。今更これが何なんだろうかという表情で首を傾げる。
「ビブルカードと言ってな、それを持ってさえいればわしのいる方向がわかる」
「へぇ!」
素直に感嘆と喜びの声を上げる弟子を見るのもこれが最後。それをきっとジンベエも意識して、目を細めながらそっと呟く。
「何かあったらわしんところにこい……いつでも話ぐらいはきいてやるわい」
いつものようにどこかぶっきらぼうだが暖かさを感じさせる師匠の態度に、ハントは顔を隠すかのように勢いよく頭を下げた。
「……師匠!」
「ん」
「本当に、今までありがとうございました! バカな俺ですが、お世話になったこと絶対に忘れません!」
「ハント、次に会うときは」
「はい! もっと、もっと強くなってます!」
「うむ、行って来い!」
「行ってきます!」
こうして、一隻の船がシャボンディ諸島を出航した。
ハントが目指すは己が故郷。
イーストブルーのコノミ諸島、ココヤシ村。
――時間が惜しい。一直線にイーストブルーへ向かおう。
ただ故郷へ帰ることしか見ていなかった。
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