第8話『新たな高み』
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「行くぞ!」
「お願いします!」
「魚人空手奥義――」
「っ」
ジンベエの手の中に掌ほどの水の塊が出来上がる。ジンベエはそれをハントの腹部へと全力で「――
『武頼貫』!」叩き付けた。
「ひぎゃ!」
ジンベエの一撃がハントの臓腑を貫き、ハント自身でもっても意味不明な言語とともに海の彼方へと吹き飛んだ。これは彼らの激しすぎる喧嘩とかそういった類のものではなく、いわばジンベエ最後の授業。
ハントには生涯使えないであろう一撃だが、これを陸式に応用させ、極めさせるための一撃。奥義というだけあって手抜きで発動できるような技ではなく、一切の手抜きはない。
だから、もちろんこれは予定調和のこと――
「……む」
――なのだが。
はるか彼方へ吹き飛んだハントが海に沈み、海面に上がってこない。
「……こりゃいかん」
なんとも本当にまずいと思っているのかわからない様子でジンベエも水中へと飛び込むのだった。
「げほっ」
「まったく、最後までしまらん男じゃのう」
「ゲホゲホッ」
引きあがられて、どうにか水を吐き出し苦しそうに息をつくハントに、ジンベエがため息を。ハントが恨みがましい目で砂浜に座るジンベエを睨むのだが、それを受けてジンベエは楽しそうに笑う。
「ま、お前さんとおったこの8年、楽しかったのは確かじゃ」
「!」
しみじみと。
「お前さんがどの海賊の支配から故郷を救いたいのか、いつも聞かれたくなさそうじゃったからわしも今更知りたいとは思わんし、聞かんが、きっとお前さんなら勝てる」
「……ジンベエ師匠」
切々と。
「なにせわしでも今のお前さんに勝てるかわからん……おっと、もちろん陸上の話じゃからな?」
「そんなことは」
ほのぼのと。
「王下七武海にこんだけ言わせるお前さんは大したもんじゃぞ?」
「……はい」
ジンベエは言う。
「もう、わしがお前さんに教えられることはない」
ハントの肩をばんと叩いて、言う。
「胸をはって故郷を救ってくるとええ!」
「はい!」
そして。
遂にこの日が来た。
彼らはもう魚人島にはいなかった。
今彼らがいるのはその直上に位置する場所にある島、シャボンディ諸島。
その海岸で、小さなボートに乗ったハントがジンベエとの最後の別れの言葉を交わす。
「ほれ、わしからお前さんにじゃ」
「……え、これは?」
「甚平じゃ」
「お……おぉ!」
渡された3着ほどの衣類。いつもジンベエの甚平を見てかっこいいだの憧れるだのと呟いていたハントへのプレゼントだった。
「さ、早速着てみていいですか!」
「うむ」
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