第8話『新たな高み』
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包まれた。
「……終わったな」
火拳に呑まれたハントに、エースは今度こそ終わったと、息をつく。が――
「ん?」
空気が震えるような何かを感じ、そして次の瞬間。
「っ”!?」
体内からどでかい衝撃が爆発した。
「……う”……が、はぁ」
膝が折れて、立っていられない。
せりあがってきた血を大地にまきちらして、両手でどうにか体を支える。最初、ハントに直接殴られたときにもいい一撃をもらったエースが、今回のはそれよりも大きい一撃だった。
――なん、だ?
ハントを見るが、もう彼は動いていない。それはそうだ、アレだけくらって動いていたら人間じゃない。だったら、と視線をジンベエへ向けるがジンベエはただ驚いた顔で気を失っているハントを見つめている。
それが示す事実に、エースは小さくうなづいた。
「へへ……戦闘中に成長しやがった」
エース自身既に大きくダメージを負ってはいるが、ここで逃げるわけにはいかなかった。
「さて、でっかいの……今度こそお前さんの番だ」
息も絶え絶えになったエースだが、それでもその闘志が萎えることはない。
「お前さん……ハントとの戦いで少し変わったのう」
「……俺が? ……いや、それよりあいつハントっていうのか」
「うむ……ハントにお前さんが同じ年齢じゃと教えてやったらお前さんにえらい興味を抱いてのう」
「へぇ、俺と同い年なのか……おっと、世間話をする仲でもないか」
あくまでも戦おうとするエースに、ジンベエはため息をつき、身構えて――
「俺の首をとりてぇってのはどいつだ?」
――白ひげの声が響いた。
ハントとエースの死闘の後、海賊嫌いだったハントもあれから少し変わった。エースに興味をもったのかもしれない。これまで何度ジンベエに誘われても行かなかった白ひげの船に挨拶にいくようになったり、エースを含めた白ひげのクルーたちと交友を深めたりするようになったり。今までのハントからは見られない海賊への積極がみられるようになった。
ただ、変わったといえばなによりもハントの魚人空手。
死の淵で編み出した魚人空手陸式。大気を制圧し、振動させ、それをもって水を爆発させる。もちろん水中では不可能な技だが、だからこそより人間らしい魚人空手。
この世にひとつの彼だけの技となった陸式を、ハントは普通の魚人空手とともに鍛え上げることになった。
そして、これまでになかった海賊たちとの交友、それに自分自身の空手。ハントにとって激動ともいえる2年が気づけば経過していた。いつの間にやらハントももう20歳。
5千枚瓦までの魚人空手を習得したハントが、ただただ身を硬くして、ジンベエの一撃を待ち受けていた。
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