第8話『新たな高み』
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くないことがわかっていても、その事実は変わらない。
まだまだ強くなれることには変わりない。そうハントを慰めようとしたジンベエだったが、その前にハントが立ち上がった。その瞳には強い光が宿っており、決して心折れた人間のソレではない。
「師匠……俺、まだ強くなりますよね」
「う、うむ……まだお前の魚人空手の伸び代はあるが――」
「いいんです、それでいいんです……俺強くなります。俺の魚人空手がその真髄にたどり着けないなら俺なりの魚人空手で別の真髄ってやつを習得してやります」
その言葉に、ジンベエの動きが止まった。
「お前さんなりの……魚人空手?」
「はい。もちろんまだ空想上のものでしかないですけど……いつか人間が使える最強の魚人空手というやつを習得してやります」
自分が新しい魚人空手を作ると、そう宣言した。
それは並大抵のことではない。ここまで魚人空手を一途に学んできたのだ、ハントもそれはわかっているだろう。
弟子の折れない心に、ジンベエはなぜか胸が熱くなるのを感じていた。
――立派になりおって。
まだまだ甘えていたばかりのハントを思い出してしまう彼からすれば、強くなるために必死になるハントの姿が急に大人びて見えたのかもしれない。
「ふ、ふん! そう思うならまずは魚人空手をもっと洗練させねばならんぞ!」
「もちろんです! というわけでいざ!」
「かかってこんかい!」
弟子が自分の可能性を諦めずに師匠へと立ち向かう。
その姿はまだ当分はこの海の森で見続けることが出来そうだった。
いつも通りの彼らの日々にも、もちろん変化はある。
その日、新聞を見ていたジンベエが怖い顔で突如「陸に行く」と言い放ったことからそれは始まった。
「え?」
首を傾げるハントもなぜか強制的に連れられて。
「どうしたんですか、急に?」
クウイゴスを操り早急に海上へと出ようとするその姿に違和感を覚えて、どうしたのか尋ねるも、答えは返ってこない。ハントとしてはこれまた久しぶりの休みだということでのんびりとしていたのだが、その考えは数時間後には破られることとなった。
「……え、火拳のエースを止める?」
「あの男、親父さんに会いにいこうとしとる……あんな危険な男を親父さんに会わせるわけにはいかん」
「親父さんってたしか、白ひげだっけ?」
「うむ」
「あ、そういえば師匠は白ひげ……さんと仲いいんだっけ、よく船に行ってますよね」
船体に身を預けて、呑気に欠伸をかみ殺すハントが小さく「俺会ったことないから知らないけど」と漏らす。だが、それににジンベエが反応、軽く笑った。
「そりゃわしが挨拶に行く時にお前さんを連れて行こうとしても、海賊と仲良くする
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