第8話『新たな高み』
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ハントももう18歳になった。
ジンベエに鍛えられてもう6年。また成長したハントだったが、その姿はどう見ても元気があると表現するには生気が足りていない。
もはや恒例海の森にて。
「……どうしようもなさそうじゃのう」
「……」
ジンベエの言葉に、ハントが悲しそうに肩を落とした。
4千枚瓦までの魚人空手を習得したハントだったが、どうしても習得できないことがあった。
それが唐草瓦正拳や鮫瓦正拳などの技。大気中の水を駆け抜けて生物の身体へと衝撃を走らせるという魚人空手特有の技だ。いや、正確にいうならばハントは唐草瓦正拳を全く習得出来ていないわけではない。
例えば、ハントとジンベエが同等の技量、筋力、覇気で唐草瓦正拳を放ったとする。その威力自体は変わらないが、ハントのは直接対象物に放たなければ単なる空振りの拳にしかならない。言い換えるならば直接対象物に触れて、やっとその技と同等の破壊力を生み出すことはできる。
要するにハントに出来ないことは大気中の水から衝撃を走らせるという行為だ。ハントに才能があるとかないとかそういう類の問題ではない。人間と魚人という、水という存在に向き合う生物としての、種族としての差が出た。これはそういうこと。
何度もいうが威力は変わらない。
完璧な唐草瓦正拳を使える魚人と大気に水を走らせることが出来ないハントが唐草瓦正拳を直接お互いの身体へと放った時、お互いが受けるダメージは同じだろう。これももちろん同じ技量、筋力、覇気と仮定しての話だが。
ともかく人間でしかないハントの、それが限界だった。
「……」
ハントが無言で目を閉じている。それを、ジンベエはなんともいえない気持ちで見つめていた。
ジンベエが知っている中で、自身を除けばおそらくはどの魚人よりも輝く魚人空手の使い手になった。まだ魚人空手の全てを教えたわけではないが、それでもこんなところで思っても見なかった壁にぶち当たってしまった。
大気中の水を走らせることも出来ない者に魚人空手の奥義を伝えることは出来ない。というか教えても習得など出来るはずがない。
人間がここまで魚人空手を習得出来ると、いったい誰が思うだろうか。なにせジンベエ自身ほとんど無理だろうと思いながら教えていたのだから。
泣き言を漏らしつつも、それでも決して諦めなかった。
故郷を救いたいと、大切な人たちを守りたいと……そう願ってやまなかったハントの心は決して折れず、ついにはここまで来た。
今この時点で、ハントは十分に強い。
最強級の男たちと会わない限りはおそらくは『新世界』でもある程度は戦えるだろう、ジンベエはそう思っている。
それにハントはまだ覇気も、魚人空手も伸びる。
たとえその魚人空手が最奥へ届
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