第二十話
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ターラの北トラキア連合の領事館に着いた俺は職員達に怪しまれながらも、いくつかの身分を明かす品を提示し、そのあとずいぶん待たされた。
領事との用件があった為に滞在していたアルスターのコノモール伯爵を偶然見つけてことなきを得たが、そうで無ければどうなっていたのやら……
身分を明かす品を返却してもらい、レイミアの書いてくれた書類を伯爵に見てもらった。
「それにしても、見違えるほど逞しくなられましたな。ですが面影はある。」
「アルスターの皆さまをはじめ、北トラキア連合の皆さんがトラキア王国に食糧を送ってくださいましたからね。贅沢を申さなければ食べ物がなんとかなったおかげでしょう。ありがとうございます」
「いやいや、我らが不甲斐なかったばかりに殿下には御苦労おかけしました。しかし、ご案じ召さるな、今度はこちらから奴らに制裁を加えましょう。殿下の身柄が戻った上は……」
「お、お待ちください、伯爵。制裁と仰るからには軍をトラキア王国に進めると?」
「左様でございます。当初の目的ではその軍容を以って殿下の身柄を取り戻し、身代金とも言うべき毎年の食糧援助を打ち切るためにと、殿下のお父上が働きかけております。」
「伯爵は…アルスターの方々は軍を動かすことに賛成なのでしょうか?」
「ふぅむ。殿下はトラキアの者達と友誼でも結ばれましたかな? このような文書を持たせてくれたご領主が居るあたり、殿下は特別な関係を築かれたと思われる。ゆえに、殿下はご反対と?」
「はい、仰る通りです。トラキアに住まう多くの方々は本当にわたしに良くしてくれたのです。それは……」
俺は長時間に渡る熱弁をふるい、理と情の両面を以ってコノモール伯爵に訴えた。
「…なるほど。ですがアルスター全体の意思は私の一存では動かしようがありません。ひいては四国会議に於いては尚更であります」
「…伯爵のお立場もわきまえず、身勝手な申し出を行ったことお詫び申し上げます」
「いや、殿下、早合点なさいますな。わたしは次回の会議に殿下の出席とご発言の機会が得られるようにと計らうつもりです。 …個人としての立場で申し上げますぞ。私とて徒に兵を以って他国を害うなど望むところではありません。先程の殿下のご主張が会議で諮られること、願っております」
その後俺はコノモール伯爵の滞在する宿舎に招かれ、久しぶりにグランベル文化圏の生活を味わった。
昨日だけでは取り切れなかった旅の汚れと疲れを取ることが出来たが、レイミアの居ない寝台は冷たく、そして広過ぎた…。
ターラ滞在中に既に連絡を行ってあったこともあり、ターラからアルスターへ向かう途中で、レンスターからの迎えが寄越されて合流することができた。
迎えの一団は兄上が率いており、4年か5年
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