27,日常
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十分に狩れる相手だけど、前衛がテツオだけで、なおかつ後ろには守らなきゃダメな私達がいるから皆は上手く攻撃ができないかもしれない。
とにかく、移動しなきゃ。
そう思って、名前も知らない誰かの肩に手をとって立ち上がらせた。
チリン、と私の耳元で音がした。
この人の耳についていたイヤリングが鈴の形をしていて、抱え起こした拍子にそれが音を立てたらしい。
ほんの少しだけ浅黒い肌。目は大きく見開かれていているが焦点が定まっておらず、口は苦しそうにパクパクと動いていた。
「大丈夫?今助けるからね」
その一言に、焦点を失っていた瞳が一瞬だけ力を取り戻した。
咄嗟に私のことを振り払おうとしたようだったけど、力は大したことがないみたいでなんとか掴んだままで入ることが出来た。
けっこう、レベルが下の人なのかもしれない。私は駆け下りた坂道を登ろうと歩き出した。
とにかく、守らないと―――
「うあああああ、サチ!!逃げろ!!」
「ぇ?」
首だけを振り向くと、そこには焦っているダッカーたちの姿があった。
そして、その横からスルスルと二匹のゴブリンが私の方にかけてくる。
なんで?――というのが率直な感想。
ケイタやテツオが抑えている二匹以外もしっかりとタゲはとっていたはずなのに、どうしてこっちに駆けてくるの?
わからないけど、もう後ろのササマルやダッカーじゃあ間に合わない。私が歩いて逃げたせいで、皆との間には随分と距離がある。
一瞬、このままこの人を置いて逃げ出そう。そう思った。
だけど、苦しそうに呻く横顔を見て、私はその人を地面に降ろすと、自分の盾と剣をしっかりと握りしめた。
怖い……だけど、一秒でも時間を稼がなきゃ。
剣がカタカタと音を立てた。盾がいつもより更に重い。
ああ、ダメだ。怖い。死んじゃうよ。
――そう思った時、自分の背後から黒い風が吹き去ったのを感じた。
風は先頭を走っていたゴブリンを吹き飛ばす。そのままもう一匹のゴブリンの剣に向かって、黒い細長いものが突き出された。
剣だ――漆黒に煌めく美しい片手剣。
それは本当に軽々とゴブリンのを弾き返す。ユックリと風は勢いを落とし、その中から剣に負けず劣らず真っ黒な一人の少年が現れた。
少年はこちらを振り返り、ぎこちない笑みを一つ。
「前衛きついなら、少し支えてようか?」
「ぇ……お願いします」
その少年は一瞬だけ微笑を浮かべると、凄まじい剣圧でゴブリンと撃ち合い始めた。
「サチィ!!」
援護に駆けつけた少年とケイタが短く言葉を交わし、お互いに攻撃を重ねていく。
数分の戦闘のあと、カマキリが形を無くしてポリゴンの紙吹雪が起こった。
「「「「やったーーーーー」」」」
目の前の四人+一人が喜びながら、ハイタッチ。
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