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アラベラ
第二幕その六
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て来た。美しいワルツの調べだ。
「あの曲に紛れて。全ては宴の中なのか。そして彼女は姿を消す」
 踊りを終えた人々が出て来た。場所を移すのだ。今度は酒を本格的に楽しむ為に。そして賭け事や話を。宴は新たな場に移ろうとしていた。
「むう」
 彼は出て来る人々を見た。だがそこにはいなかった。
「やはりいないのか。それではやはり」
 出て来る人々の中にはフィアケルミリもいた。しかし彼はそれには気付かない。考え続ける。
「ううむ」
 ここでフィアケルミリが彼に話し掛けてきた。
「もし」
「はい」
 彼はそれに顔を向けた。
「何でしょうか」
「貴方は場所を移られないのですか?ここに立ってばかりのように見受けられますが」
「それですが」
 暗い顔をして答えた。
「ちょっと事情がありまして。もう少ししたら向かいます」
「そうですか」
 彼女は納得できなかったがその場は退いた。そして男達に取り囲まれながら宴の場に向かった。
 そこからは既に酒や食べ物を楽しむ声が聞こえてきている。多くの者はそれを聞いて自分も心を楽しくさせていく。だがマンドリーカだけは違っていた。そこに彼の従者の一人が来た。
「旦那様」
「どうした」
 彼はその従者に対して答えた。
「お手紙を預かっておりますが」
「誰からだい!?」
 声は怖いものとなっていた。だが彼はそれに気付かない。
(もしや)
 ふと思った。そしてそれは当たった。
「アラベラ様からです」
「やはりな。ちょっと待て」
 彼は自分の従者に言った。
「手紙を調べてくれ」
「手紙をですか」
「そうだ。鍵が入っていないかな。頼むぞ」
「はあ」
 彼は言われるまま手紙を調べた。
「そのようなものはないようですか」
「そうか」
 だが彼の不安は増す一方であった。
「気になるな」
 彼は顎に手を当て考えに入った。
「恐ろしい。この手紙が」
「では読まれるのを止めますか?」
「いや、それは待ってくれ」
 だがマンドリーカは読まないではおれなかった。
「読もう。手渡してくれ」
「はい」
 従者は主に言われるままにその手紙を差し出した。そして彼は手紙の封を切った。そして中身を取り出した。

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