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渦巻く滄海 紅き空 【上】
四十八 木ノ葉崩し
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シは命じた。
「幻術を解いてナルとシカマルを起こせ。久々の任務だからな、心してかかれよ」

師の次の一言に、顔を強張らせるサクラ。ごくりと呑み込んだ生唾が緊迫したこの状況を現実だと物語っていた。

「波の国以来のAランク任務だ」















「やはりお前か…」

風影の正体にヒルゼンは双眸を閉じた。予想通りの相手に哀愁を漂わす。
「どの面下げて来たかと思えば……よりによって風影殿に化けるとはな」

風影の顔を文字通り剥ぐ。笠を脱ぎ去った彼は、かつての師に仰々しく会釈してみせた。
「良き趣向だと思ったのですがねぇ……猿飛先生」

にんまりと、且つ艶やかに微笑んでみせる。そのまま無造作に風影の笠を投げ捨てるかつての弟子を、ヒルゼンは哀しげに見遣った。

「趣味が悪いのは変わっておらんのう」
「貴方は変わらないままですね、先生」
ヒルゼンの嫌味に、逆に皮肉を返す。風影に扮していた彼の長い黒髪が風に靡いた。

「変化の無い人生なんて刺激が無くて退屈だわ。風車だって止まっているとつまらないでしょう?」
「情緒があって良いではないか」
「まあ、偶にはいいかもしれないけれど…。やはり見るに値しない」
ぺろりと舌舐めずりする。覗き見える長い舌はまるで血のように赤い。


「だから私が回すの。『木ノ葉崩し』という風で」


慌てず騒がす、ヒルゼンは笠に指を掛けた。目深に被り直す。
「その風が果たしてお主に従うかのう……」
宣告した相手を鋭く見据える。
「―――――――大蛇丸」


笠の陰から覗き見える現火影の眼光は、全盛期と何等変わりはなかった。

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