暁 〜小説投稿サイト〜
シャンヴリルの黒猫
25話「エルフ」
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 ゆっくりと下降してラフランジェの背から飛び降りたユーゼリアは、そのまま一直線に走り出した。役目を終えたラフランジェが、再び地面に空いた孔に溶けるようにして吸い込まれる。

「アッシュ!」

「ユリィ、お疲れさグエッ!」

 走ってきた勢いのまま抱きつかれたアシュレイは、その身体を受け止めつつも首を絞められたニワトリのような声を出した。

「もう、馬鹿、馬鹿ッ! なんであんな危ないことしてるの! 怪我は!?」

「それは無いが…今回の俺の役割は足止めだったから――」

「ああいうときは逃げてもいいの! それにアッシュだったらグレイハウンドくらい倒せたでしょう!」

「えーと……すみません」

 もう何を言っても怒られそうで、でも泣きそうな顔をしたユーゼリアに何か言える訳もなく、気の利く言葉を思いつく程人間慣れしていなかったアシュレイは、とりあえず謝った。ユーゼリアはアシュレイに怪我がないことを確かめると、ほっと息をついて一歩下がった。途端に、今まで周りで見ていただけの警備兵他数名の冒険者達が2人の周りに集まる。

「兄ちゃん本当に怪我はないのか?」

「あんた、若いのにすげェな! 俺なんか何が起こったか全然わかんなくて…」

「怪我人が少なく済んだのも、結果的に全部あんたとお嬢さんのおかげだ! ありがとう!」

「にしてもこの子可愛い…って、どっかで見たことあるぞ」

「もしやお嬢さん召喚魔道士の【孤高】さんですか!? ファンなんです、サインください!」

「やべェ本物!? 【孤高】さん、握手してください!」

 一気に黒山の人だかりとなったその場で、話題はだんだんユーゼリアに移行し、困った顔をしつつも1つ1つ丁寧に応じる彼女を見て、アシュレイは苦笑しつつもその場を抜け出た。近寄ってきた人物に目を向けると、小さくお辞儀をされた。

「怪我、してますよね。掠っただけみたいですけど、耳の後ろ」

「え?」

 自分でも気づかなかった。確かに触ってみると、少しヒリヒリする。どうやら1匹目のグレイハウンドの初撃を避けた時にやられたらしい。この程度の相手に一撃でも喰らったのを知って、自分で自分に驚いた。

(流石に侮りすぎたか)

 グランドウルフの攻撃を避けながら、アシュレイは考えていたのだ。先ほどのバルバズのはちみつをユリィへの土産にしたら、美味しいご飯となっていただろうか、とか。そういえば自分もいくらか料理はできるが、1000年前のレシピは果たして現代人の口に合うだろうか、とか。
 限りなくどうでもいいことを考えていたため、予想外の方向からの初撃を逃げそこねた。

 にしても、目の前の濃茶のローブ――魔道士のクオリが、なぜ本人も気づか
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