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アラベラ
第一幕その一
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対して答えた。ここで扉をノックする音がした。
「こんな時に」
 女はそれを見て顔を顰めさせた。
「ズデンコ」
 そして男の名を呼んだ。
「お母さん、何?」
 するとすぐに小柄な少年が部屋に入って来た。
 蜂蜜がかかったような金色の髪に透き通る様な青い瞳をしている。肌は白くまるで雪の様である。今は男の服を着ているが服さえ変えれば少女といっても通用する程であった。
「伝えて」
 女はズデンコと呼んだ自分の子供に対して言った。
「父は留守、母は寝込んでいると。いいですね」
「わかりました」
 ズデンコは頷くと扉に向かった。そしてほんの少しだけ開け応対をした。暫くして扉は閉められた。
「何だったの?」
 女は問うた。
「請求書です、また」
 ズデンコは暗い顔をして答えた。
「やっぱり」
 彼女はそれを受けて深い溜息をついた。
「もう請求書で埋もれそうね」
「アデライーデ」
 だがここで男が彼女の名を呼んで嗜めた。
「今は静かにな」
「わかったわ、貴方」
 そう言って夫であるヴェルトナー伯爵に頭を下げた。
 実は彼は伯爵でありそれなりの身分にある。若い頃は騎兵隊に所属し太尉であった。だが軍を退役してからは泣かず飛ばずであり今は博打で生計を立てているという有様であった。無論それで生きていけるわけはなく今や破産の危機にあるのだ。
 今彼等は未来を占ってもらっている。そうでないと不安で仕方がないのだ。
「心配はいりませんよ」
 占い師は二人を宥めるようにして言った。
「幸福が近付いています」
「本当ですか!?」
 二人はそれを聞いて身を乗り出した。
「御主人」
 彼女はヴェルトナーに対して言った。
「貴方は先程大金を失われましたね」
「はい」
 彼は憮然としてそれを認めた。
「よく御存知で」
「はい。このカードが教えてくれました」
 彼女は答えた。
「それはわかっていたわ」
 アデライーデはそれを聞き首を横に振った。

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