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マノン=レスコー
第二幕その一
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に顔を向けてきた。
「あの人は今どうしているのかしら」
「あの人とは?」
「いえ、いいわ」
 しかし彼女は言いかけたところで兄から顔を背けた。そして俯いてしまった。
「いや、わかった」
「わかったって。兄さんは私のことなんか」
「おい、馬鹿にするな」
 だが兄は言う。
「俺はずっと御前と一緒にいたんだ。だからわかる」
「じゃあ言わなくてもいいわね」
「ああ、それでいい」
 俯いた妹に対して述べる。
「彼ならな」
「今どうしているの?」
「元気にしている」
「本当に!?」
 不安げな顔だが顔を上げてきた。
「ああ。それは大丈夫だ」
「そうなの」
 その言葉を聞いて少しほっとしたようであった。
「だったらいいわ」
 マノンはそう言った上で述べるのであった。
「別れの言葉もなかったし。彼は優しくて誠実だったから」
「そうだな」
 レスコーもその言葉に頷く。
「彼はいい奴だ」
「知ってるの?彼のことを」
「あの後だ、俺は彼と会ったんだ」
 レスコーは真面目な顔でマノンの顔を見据えて述べる。その目は決して嘘をついているものではなかった。

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