暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
マイとユイ
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「お前らっ……見てないで……なんとかしろっ……!!」

そんな声が掛かるも、他の男達にはどうしようもない。武器はもうないのだから。

南北の通路からも、予想外の事態を察したブロック役のプレイヤー達が走りこんでくる。

半円形に周囲を取り囲む男達に、レンはPKKとして名をはせたあの頃に戻ったような爛々と光る眼を向けた。

物も言わず地面を蹴り、集団に突っ込んでいく。

たちまち、轟音と絶叫の連続が狭い空き地に充満した。










数分後───

我に返ったレンが足を止め、両手を降ろすと、空き地にはわずか数人の軍プレイヤー達が失神して転がるのみだった。

残りは皆リーダーを見捨てて逃げ出したらしい。

「ふう……」

大きくひとつ息をついて、ワイヤーを収め、振り返ると──そこには、絶句してレンを見つめる眼鏡の女性と、子供たちの姿があった。

そして、「すごーい」などとちょっとズレた歓声を上げているマイ。

「あ……」

レンは息を詰めて一歩後ずさった。先程の、怒りに身を任せた修羅のごとき荒れようは、さぞかし子供たちを怯えさせただろうと思い、悄然とうつむく。

だが突然、子供たちの先頭にいた、赤毛で逆毛の少年が、目を輝かせながら叫んだ。

「すげえ……すげえよお前ぇ!! 初めて見たよあんなの!!」

「……さすがだな」

にやにや笑いながらキリトが進み出てきた。

左手でマイに良く似た黒髪の少女を抱き、右手には剣を下げている。どうやら数人は彼が相手をしたらしい。

「……あ、あっははは」

困ったようにレンが笑うと、子供たちがわっと歓声を上げて一斉に飛びついてきた。眼鏡の女性も両手を胸の前で握り締め、両目に涙を溜めて泣き笑いのような表情を浮べている。

その時だった。

「みんなの──みんなのこころが──」

細いが、よく通る声が響いた。アスナがはっとして顔を上げた。キリトの腕のなかで、先ほどまで寝ていた黒髪の少女が宙に視線を向け、右手を宙空へと伸ばしていた。

アスナはあわてて、レンはつられるようにその方角を見やったが、当然ながらそこにあるのは重い第二層の底蓋だけだった。そこには何もない。

「みんなのこころが──ひかりに……」

「ユイ! どうしたんだ、ユイ!!」

キリトが叫ぶとユイという名の少女は二、三度まばたきをして、きょとんとした表情を浮べた。

アスナもあわてて走りより、ユイの手を握る。

「ユイちゃん……何か、思いだしたの!?」

「……あたし……あたし……」

眉を寄せ、うつむく。

「あたし、ここには……いなかった……。ずっと、ひとりで、白い場所にいた……」

何かを思い出そう
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