暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
マイとユイ
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。また一人、吹き飛ばされる。

「な、なっ!……こ、このガキャァー!」

そんな時になって、やっと状況が把握できたのか、他の男達が次々と腰から大ぶりのブロードソードを引き抜く。剣の表面が低い西日を反射してぎらぎらと輝く。

一度の損傷も修理も経験していない、新品の武器特有の輝き。

その輝きを受けて、レンは一人笑っていた。何ヶ月も心の奥底に沈みこんでいた《鬼》が、少しだけだが顔を覗かせる。

「そ」ん『ナニ見つめ「んナよ。照レチマうじゃ』ねェかよ」

にィ……ッ、と引き裂けたような笑みを浮かべる少年は、何も言わずとも大の男達を気圧していた。

そしてそれは、背後にいたキリト達も同じだった。

『そレ」によォ、「剣ヲ振ッた』コトもな「イヤ』ツが、剣士ジミたコトヲ言ウナよ「なァ』

レンの、レンの体を借りた《鬼》が嗤う。その瞳が徐々に真っ赤に染まっていく。

ヴヴンッ!というこれまでとは違う風斬り音。パキリ、と軽い音がして男達のブロードソードが真っ二つになる。

三度の風斬り音。

周囲を染める紫色の閃光。爆発にも似た衝撃音。

手近な男の重そうな体が宙をくるくると回りながら吹き飛び、数メートル離れた石壁に激突して再び紫の閃光を撒き散らした。

圧倒的な力、圧倒的な暴力。

「安心してよ、おじさん達。HPは減らないから」

血色のその少年の声からは、もうあの狂気じみたエフェクトはなくなっていたが、それが逆に怖い。

まるで、明らかに異常なものが無理やり平常に戻ろうとしているかのような。
 
地面に座り込んで、両目を限界まで丸く見開いた男の前まで歩み寄ると、レンは再び右手を閃かせた。

閃光。

轟音。

リーダーの体が地面をごろごろと転がる。

容赦ない歩調で三たび歩み寄るレンの姿を見上げ、リーダーはようやくレンの意図を悟ったように唇をわななかせた。

犯罪防止コード圏内では、武器による攻撃をプレイヤーに命中させても見えない障壁に阻まれてダメージが届くことはない。

だがこのルールにも裏の意味があり、つまり攻撃者が犯罪者カラーに落ちることもないということになる。

それを利用したのが「圏内戦闘」であり、通常は訓練の模擬戦闘として行われる。

しかし、攻撃者のパラメータとスキルが上昇するにつれ、コード発動時のシステムカラーの発光と衝撃音は過大なものとなり、また両者のステータス差があまりに大きいと、発生する衝撃によって宙を吹き飛ぶような事も起こりうる。

慣れない者にとっては、HPが減らないとわかっていてもその恐怖はおおよそ耐えられるものではない。

「ひあっ……ぐぎゃっ……やめっ……」
 
衝撃によって宙を舞うたびに、リーダーはだらしない悲鳴を上げた
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