第5章 契約
第56話 ハルケギニアの夏休み・宵の口
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など無かったのですが……。
「わたしは店長のスカロン。これから、御贔屓にして頂戴ねぇ」
もう二度と来るか、と心の中で悪態を吐きながらも、腕を掴んだまま放そうとしないスカロンから解放される為には、テーブルに着いて料理を注文するしか方法がないと観念した俺。願わくは、地球世界のぼったくりバーとは違う、一般的な料金設定で有る事と、夏だ祭りだ○ン○ンだ、とか言い出して、オカ○が踊り出すような店でない事を祈りながら、なのですが。
尚、中世ヨーロッパの娯楽と言うと、その手のダンスが一般的だったはずです。まして、ソロモン七十二の魔将の一柱、魔将シトリーの職能はその手のダンスです。それだけで魔界の公爵に任命される程の信仰を集める事が出来るのですから、当時の庶民がどれだけ猥雑で淫靡だったか判ろうと言う物ですよ。実際、娯楽も少なかったですしね。
ただ、故に、ダンス自体が禁止されていた地域だって少なく無かったのですが。敬虔なキリスト教の信者の目からすると、見るに堪えない光景でしたでしょうから。
故に、魔将シトリーはその職能が示す通りの小物で有りながらも、魔界の公爵として聖職者たちから認定されたのですからね。
「女性同伴なので一番良い席を用意して貰えますか、店長」
……と、諦めた者の雰囲気を漂わせながら、そう告げる俺。
もっとも、どんなに高級な店で有っても、現代日本からやって来た、更に、巫蠱の術の修業の為に料理を学んでいた俺の舌を満足させる料理を出す店が、このハルケギニアに有るとも思えないのですが。まして、タバサの方も、元々ガリアの王族。その上、俺がやって来てから彼女が口にする料理は、ほぼ俺が準備している状態。
このハルケギニア世界のレベルで考えると異常に肥えた舌を持つ二人を前にして、中世ヨーロッパレベルの食材と調味料で太刀打ち出来る訳はないのですが。
「ウィ、ムッシュ」
何故か、その部分だけがフランス語の答えを返して来たスカロン店長が、店の奥に向かって一人の店員を呼んだ。
……って言うか、今、スカロン店長はルイズと呼んだような気がするのですが。
その店長の呼ぶ声を聴いて店の奥から、一人の小柄な少女が金属製のお盆を片手に、高い踵の靴を履きながらも危なげない足取りで小走りに近付いて来る。
そして、俺達三人の姿を確認した瞬間、少女は、軽快なその歩みを止めたのですが、しかし、それも一瞬の事。直ぐに諦めたのか、それまでと同じように不器用な彼女にしてはかなり安定した様子で歩み寄り、俺達の目の前に立ったのでした。
その魅惑の妖精亭の店員の少女。ピンク色の特徴的な髪の毛を持ち、銀製の十字架を象ったネックレスを身に付けたバニーちゃん姿のルイズが、顔では笑いながら。
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