第5章 契約
第56話 ハルケギニアの夏休み・宵の口
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た、ではなく、何故か見つけたと言ったキュルケが、俺とタバサの事を顧みる事もなく、真っ直ぐに、そのかなり流行っている雰囲気の店の扉を押し開いたので有った。
そして、その瞬間。俺の心の中に、何か非常に嫌な予感に似た何かが生まれた事は、言うまでも有りませんでした。
☆★☆★☆
「いらっしゃいませ〜」
野太い。明らかに男性と思しき声を、お水のおねいさん風にアレンジした口調で客を出迎えるピチピチの革製の胴着を身に付けた……オカ○。
素直に回れ右しようとした俺の腕を、がしっと掴む妙に湿ったゴツイ手。
「ええい、お放しくだされ梶川殿。武士の情けを御存じ有らば、お放し下され、梶川殿」
取り敢えず、松の廊下の浅野内匠頭のマネをして逃げ出そうとする俺。もっとも、史実上の浅野内匠頭が、こんなに冷静な頭で行動していたとは思えないのですが。
しかし、
「あら、こちらお初?」
予想通りのオ○マ口調が後ろから聞こえ、更に俺の腕を掴む手に力が籠められる。
……って、龍種の俺が振りほどく事の出来ない馬鹿力のオカ○って、何者? 矢張り、オ○マは無敵なのか?
「こら、キュルケ! 俺は、○カマ・バーで人生の真実なんぞ、見つけたくはないぞ! こんなトコロで見つかる真実は、もう、どうしようもないぐらいに間違った真実だ!」
かなり大きな声でキュルケに向かってそう言う俺。まして、こんなトコロに足を踏み込むと、色々と失くしては問題の有るモノをなくす可能性も有ります。
表の看板から推測すると、ここは宿屋。一階部分は食堂兼酒場で、二階部分がおそらくは宿屋と成っているのでしょうが、こんなトコロの宿屋などに泊まる事が出来る訳がないでしょうが。
「何を言っているのか良く判らないけど、ここは、女の子が接待をしてくれる酒場で、美味しい食事を提供してくれる事でも有名な店よ」
しかし、頭の煮えた俺と比べると、かなり冷静な声でキュルケがそう答えた。
その言葉に、少し冷静に成って周囲を窺う俺。
確かに店内に漂う香りは、それなりの料理と酒の香。まして、この俺の腕を掴む筋肉質の大男以外、店内を忙しなく動き回っている店員の見た目は間違いなく女性の姿で有った。
もっとも、見た目は女性。中身は男の可能性もゼロではないと思いますが。
「そうよ、貴族のお嬢さま方。ここは、ひと時の夢の時間を演出する妖精たちの住まう場所。魅惑の妖精亭」
魅惑と言う因りは悪夢そのモノの雰囲気で身体をクネクネさせながら、筋肉質の大男がそう言った。尚、その瞬間に、もう一度回れ右をして店外に逃げ出そうとした事は言うまでもない。
但し、ハンマー投げの選手かと言うような力強い腕が、迷い込んだ子羊を逃がす事
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