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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第56話 ハルケギニアの夏休み・宵の口
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が。

 通りの角々には、明らかに娼婦と思しき女性たちが立っていますしね。

「あのね、シノブ。人生の真実って言うのは、何も綺麗な文学や芸術の中にだけ存在する物じゃないの。時にはこうやって、庶民の中に入り込んで、人々の喧騒の中に身を置く事からも見付け出せる物なのよ」

 何かもっともらしい理屈をこね繰り廻しているキュルケなのですが……。様は、俺とタバサを引っ張り出したいと言うだけの事なのでしょう。
 少なくとも、今の俺に人生の真実など、必要とはしていない物ですから。

 出来るだけ道の真ん中を進みながら、何処かに向かって進むキュルケを追う俺とタバサ。尚、何故、道の真ん中を進むのかと言うと、俺も、そしてタバサもつばの広い帽子は着用していませんから。つばの広い帽子を被っていないと言う事は、上空から何かが降って来たとしたら、頭からそれを被る事となって仕舞いますからね。
 この世界の都市と言うのは、必ずしも衛生的な空間と言う訳では有りませんから。

 日が暮れたと言うのに妙な熱気の籠った、正に熱帯夜と言うべきトリステインの王都を進む事しばし。周囲には、裏通りに相応しい場末感の漂ういかがわしい酒場と、ガリアに存在している公営、半公営のカジノとは違う如何にも賭場と表現した方が良いカジノが店を並べている。
 正に、季節が持って居る熱気と、人間が持って居る熱気が混然一体となって、より混沌とした状況を作り上げている。ここはそう言う空間で有り、そして街で有った。

「確か、この辺りの店のはずよね」

 幾つかの角を曲がり、通りの名前を確認した後に辺りをキョロキョロと見回すキュルケ。しかし、何の店を探しているのか判らないので俺としてはタバサの隣にぼぉっと突っ立ったまま、キュルケの次の動きを待つしかないのですが。

 する事もないので、見るとはなしに、周囲に視線を送る俺。それに、ここは流石にトリステインの王都。夜と成って居ても、まだまだ宵の口。多くの人々が通りを行きかい、アッチの飲み屋、ここのカジノへと姿を消して行く。
 確かに、こちらの世界に来てからは、タバサの御供で色々な街に出向きましたが、ここまで庶民の生活に近いトコロまで足を踏み入れたのは初めてですか。

 そんな感想を思い浮かべながら、周囲を一渡り見回した後、再び、正面に視線を戻して来たその瞬間、正面に有る店。この辺りに有る飲み屋の中ではまだ小奇麗な部類の店の入り口辺りに、一瞬、ピンク色の何かが見えたような気がしたのですが……。

 その瞬間、キュルケから、少し奇妙な気が発せられる。そう例えて言うのなら、目の前でヒラヒラと飛ぶチョウチョを見つけた時の子猫のような。捕食者で有ると同時に、オモチャを見つけた子供のような……。

「見つけた。あの店に入りましょう」

 決め
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