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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第56話 ハルケギニアの夏休み・宵の口
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たちにしか通じない言葉が有るのが恋人同士である。……と言う言葉も存在しますが。

「夏休み前からあまり会えなかったけど、二人には、二人だけの時間が流れていたのね」

 少し探るような、それでいて茶化すようなキュルケの台詞。確かに、キュルケの言うように、俺とタバサの間にもアルビオン行き以後の時間が流れたのは事実です。但し、俺とタバサの間に流れた時間は、恋人同士の二人の間に流れる甘酸っぱい時間などではなく、血風が飛び散り、銀の光が閃く時間だったのですが。
 恋人同士と言うよりは、正に相棒、戦友と言う間柄でしょう。今の俺とタバサの関係は。

「時間が流れて居たと言う部分は否定しないけど、多分、キュルケは妙に甘酸っぱい方向に勘違いしていると思うぞ」

 アルビオン行き以降に俺とタバサが巻き込まれた事件は、紅い夢の世界から、カジノ潜入捜査に始まる邪神顕現。ベレイトのUMA騒動に始まる都市壊滅に繋がる魔物召喚事件。貴族の後継者の御披露目パーティに始まるクーデターの夜。これだけの事件を潜り抜けて来たのですから、二人の距離が多少なりとも近付いたとしても不思議ではないでしょう。
 これで、未だ二人の間に何らかの壁のような物が存在して居たとしたら、何処かの段階で、どちらかに取り返しの付かない状況が訪れていたでしょうから。

「そうしたら、コルベール先生。これから彼女が本当の姿を取り戻すまで、三度の食事は私が作りますから、先生はそうやって彼女の食事を手伝って貰えますか?」


☆★☆★☆


 トリステイン王国の王都トリスタニア。そう言えば、今までの俺には何故か縁のない街では有りましたね。
 ガリアの王都リュティスは何度も赴いていたのですが。

 俺の時計が示す時間は既に夜の八時を過ぎているのですが、日本の感覚で言うならば、未だ夕闇という赤から蒼に移り変わる時間帯の感覚。実際、未だ西の空はほのかに明るいですからね。まして、もっと北の方に行けば、白夜と言う季節のど真ん中ですから。……ヨーロッパに置ける夏と言う季節は。
 共工の事件の時だって、午前四時半ごろには日の出の時間に成っていましたから。

 流石に、夏の盛りのこの時期。まして、とある事情により雨が降って居ない事により、昼間に活動出来ない分、夜に活動する夜行性の人間が増えているのか、未だ宵の口の時間帯とは言え、魔法の明かりに照らされた王都の夜は人々の活気に満ちた世界と成っていた。

「それで、今晩は何処に連れて行ってくれると言うのですかね、キュルケさん」

 キュルケに対して、そう問い掛ける俺。尚、彼女の向かっている道は、だんだんと通り自体が狭まって行き、逆に、この世界の庶民。猥雑にして淫靡。俺やタバサの雰囲気には向いていない雰囲気の強い場所に成って行っていると思うのです
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