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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第56話 ハルケギニアの夏休み・宵の口
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。それで、その妙な格好は、彼女専用の食事を作る際の正装だと言う訳ね」

 日本の神職の正装を妙な格好の一言で片付けられるのは少し問題が有るような気もしますが、それでも、キュルケの言っている事は概ね正解なので、一応、首肯いて答えて置く俺。
 そうして、

「この格好は。……本来、魃姫と言うのは、日本の神ではなく大陸由来……俺の暮らして居た国ではない、別の国の神。但し、俺の暮らして居た日本にも古くから魃姫についての伝承は残って居たし、それならば、日本の古式に則って神饌を作る際の作法を踏襲すべきかと思っただけなんや」

 そもそも、コルベール先生に保護された、と言う個所からして不思議だったんですよね。その癖、出された食事に関しては手を出そうともしていないみたいですし。

「コルベール先生と魃姫の間に某かの縁が有るから、先生が彼女を保護出来たはずなのに、何故か、彼が出してくれる食事には手を出そうとしていない。だから、古式に則って、神前に出す神饌と同じ方法で作った食事。唾はおろか、直接、息さえ吹き掛ける事もなく作り上げた食事を、自らの額よりも高い位置に掲げた状態で神前へと運び、古式に則って神さまの前に並べる。更に、彼女と縁の有るコルベール先生に彼女の食事の介添えをお願いして」

 現在は、親鳥に餌を与えて貰う雛鳥の如く、コルベール先生が口元に運ぶ御飯や、おかずを食べている少女。
 その様子は、非常に心が和む様子。この一場面だけを見た人間は、この少女の正体が日照りを起こす祟り神だと思う人間は一人もいないでしょう。

 そして、その姿は三カ月前の俺とタバサの姿でも有りました。

 尚、基本的に魃姫は中国の神様のはずなので、食事に関してはそう細かな好き嫌いは存在していないとは思います。ただし、何故か、此処に顕われた彼女はハルケギニアの食事には手を付けて居なかったようなので、先ず肉料理を外し、海産物。具体的には尾頭付きの鯛を用意して、それに御飯。塩。そして何より御神酒。そこに季節の野菜と果物。そうやって準備を行った料理を日本式の作法に則って神前に御供えをする。こうやって、彼女が食事をしてくれるように考えられる策はすべて打ったので、何処の部分が正解だったのかは判らないのですが、それでも霊力が有る一定まで回復すれば、今の女童の姿形から、本来の彼女の有るべき姿。天帝の妹に相応しい天女の姿形へと変わるはずです。

 そして、本来の姿形を取り戻せば、彼女との意志の疎通も可能でしょうし、自分の能力で自らの世界に帰る事が出来なくても、俺が手助けを行えば彼女も帰る事が出来ると思います。

 完全には信用し切ってはいないキュルケと、少し険しい表情のタバサ。タバサは俺を召喚してから、妙な事件に巻き込まれ続けて居るので、こんな普通では信じられない事件に遭遇す
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