第5章 契約
第56話 ハルケギニアの夏休み・宵の口
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俺は気を読む事が出来ます。ほんの僅かな表情の違いと、その時に発せられる彼女の雰囲気に因って彼女の現在の感情を読む。これは、この四月の出会いから積み上げて来た生活が生み出した俺の特技ですから。
【確実にそうだとは言えないけど、水の邪神共工が顕われた事に因って狂った世界の在り様が、魃姫を異界から呼び寄せた可能性は高い】
流石に、実際の言葉にして告げる事は出来ないので、【念話】にしてタバサに伝える俺。確かに、キュルケもタバサの正体については気付いているでしょうけど、まさか、自らの親友の少女が、邪神を相手に度々戦わされているなどとは思っていないでしょうから。
実際、何故、俺やタバサがこんな厄介事に関わらせられるのか、非常に不思議では有るのですが……。
おそらく、この生け贄の印や、変わって仕舞った左目に理由が有るのでしょうね。
それと、タバサの家。いや、ガリアの王家の事情と言う物も関係しているとは思いますが。
「それで、百歩譲ってあの女の子がその日照りを起こしている悪魔なら、さっさと倒すか、追っ払った方が早くはないの?」
完全に俺の言葉を信用した訳では無い事は確かでしょう。しかし、コルベール先生に食事をさせて貰っている少女が人ならざるモノだと言う事は感じていたはずのキュルケが、そう俺に対して問い掛けて来る。確かにその方法も有るには有るのですが……。
尚、このキュルケの言葉にタバサの方は、多少、否定的な気を発しました。彼女は俺とより濃い繋がりを持って居て、明確な悪意を感じない相手を排除するようなマネを俺が行わない事を知って居ますから、これは当然の反応と言えば、当然の反応でしょうね。
まして、人間と違う存在だから排除する。では、タバサや俺の血脈は存在する事さえ否定されて仕舞います。更に吸血姫はその習性に因り、人に対して不利益をもたらせる存在でも有ります。
吸血姫と雖も、無暗矢鱈と人間を襲う存在ばかりとは限らないのですが、それでも、そんな事を知って居る人間は多くは有りませんから。
「俺のずっと昔の、……俺の暮らして居た世界の伝説上で語られて居る御先祖様が、彼女の力を借りて、雨を降らし、風を起こして暴れ回る邪神を倒した事が有る。その際の恩人を、子孫の俺が民に仇為す邪神として封じる訳には行かないからな」
それに、そもそも蚩尤との戦いの時に霊力を消耗し過ぎて、天界に帰る事が出来なくなって、北方。つまり、中原の北方に存在する砂漠へと追いやられた、……と言う事に成っているのです。魃姫と言う日照り神は。もし、それが事実で有るのならば、龍の血を引く俺が彼女を元の世界に帰すのは当然。
これは、間違いなく俺が為さなければならない仕事ですから。
「成るほど。大体の所は理解出来たわ
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