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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十三話 備えあれど憂いあり
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り、その全てを回すには力による規律と信用の両方がなければならないのだ。私はそれを理解していない沈む船に乗り込む程に水練は得意ではない」

「そうですね。本当ならば二重間諜(スパイ)なんて綱渡りは御免ですが。」

「大殿にこの事は伝えたほうが良いだろうな。まったく何かあると皆が我々を疑う、酷い話じゃないか。
豊久、お前もそう思うだろう?」

「・・・・・・そんな家風がこの四半世紀年で創られましたからね。かつての軍閥貴族もそれなりに平時に迎合できていた、と云う事でしたが」
そう言ってまた二人で苦笑を交える。

「――直衛の事もあります、気をつけて下さい。」
 ――これから戦場に赴く奴が云う言葉ではないぞ、馬鹿息子め。
「あまり心配するな。私が後方を抑え、お前が前線に赴くのだ。
私も相応に働くだけさ。それに、山崎にあれだけ熱心に言ってくれたからな」
 また不貞腐れて細巻で煙幕をはりだした子供を見て声を出さずに笑った。
 ――政争で勝利を得る前に〈帝国〉軍が皇都に殺到する可能性を脳裏から追い出しながら

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