衛宮切嗣
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除され気を失い、ぐったり地に倒れ込むセシリアと鈴音。そして、そんな二人を庇うように間に立つ、黒の異端者「衛宮切嗣」だった。
――我は常世全ての善と成る者
――我はこの世全ての悪を敷くもの
「衛宮……お前は、一体……」
side ラウラ
「どういう事だ?」
プライベート回線から、奴の声が聞こえた。極限まで感情を圧し殺した、静かな声だ。
「何故、こんな事を……」
そうだ、私はこれが聴きたかったんだ。
「くふっ……」
思わず笑いが漏れた。
「ああ、惜しむらくは貴様の泣き顔などではなく、奴の泣き叫ぶ声なら最高だったのにな」
最初からこうすれば早かった。織斑一夏を消せば大切な人が悲しむ。ならば、奴の大切なモノを壊せば良いだけだ。そうすれば……
「カハハ……衛宮切嗣。貴様も、嘆きの糧となれ」
私は殺すつもりでシュヴァルツェア・レーゲンの武装を展開し、奴に向かっていった。敵のISは未知なるものだが、奴はボロ雑巾を二つ抱えたまま戦うのだ。負ける道理はない。
――――――――――――――――――――――――
自分に迫る黒い死神を切嗣は……見ることなく踵を反すと、地面に臥していた二人を抱えた。
「……」
彼の表情は一切動かない。既に戦闘は始まっているのだ。余計な感情は切り捨てる。
これが衛宮切嗣を強者たらせる所以だ。戦闘に余計な感情を持ち込まず、冷静に状況を分析し、相手の誇りすら戦闘の道具にする。差し詰め、振り返った先に居たラウラを……まるで興味が無いとでも言うかの様に見たように……
「っ!?私を、そんな目で見るな―――!!」
切嗣の本領は、防衛でも無ければ攻撃でもない。暗殺だ。敵の警戒を掻い潜り、油断と慢心の隙間に銃弾を差し込む。それは、どう足掻いても直接的な戦闘には向かない。ましてやセシリアと鈴音を守りながらの防衛戦など……。故に、切嗣は最低でも「防衛」から「撤退」に状況を持ち込む必要があった。その為にラウラを挑発し、攻撃を直線的なモノに誘導させる。――ラウラ自身の、ほぼ唯一と言っていい弱点。それは感情の制御。衛宮切嗣が最も得手とするもの
「あああ!!」
ワイヤーブレードが切嗣の足を薙ぐように払われる。其れを余裕を持ってかわし、常にラウラとの距離を一定以上に保つ。
「ちょこまかと……!」
縦横無尽に振るわれるワイヤーブレードを、切嗣は両脇に二人を抱えながら全てを見切っていく。一本の銀の刃が、彼の喉をかき斬るように払われた。其れを後ろに体を反らし、紙一重でかわす。そのまま、勢いを殺さず体を回転させ第二、第三の刃をもかわす。
「ふっ……達者なのは口だけか」
嘲笑を浮かべ、目の前の――嘗て、愛娘に重ね合わせてしまった――敵を見据える。
「舐めるな……!」
それがまた相手の怒りに油を注ぎ、一層攻撃を苛烈にしていく。
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