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第十九話 空、渇望

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誠也は夢を見ていた。
曽祖母、高町なのはに憧れたその時のことを。


誠也が五歳の時、すでに誠也は魔導師としてほぼ完成の域に達していた。
魔力の運用も十分で、砲撃魔法を中心とした様々な魔法も習得し、デバイスなしでもある程度の戦闘行動がとれるようになっていた。
これくらいの時期の時に祖母に魔導師として一人前と認められ、その証としてあるデバイスを見ることが許された。
それが誠也の今の相棒にして高町家の家宝、レイジングハートである。
レイジングハートはなのはが亡くなって以降、誰の認証も受け付けなくなっていた。
それはなのはの娘であっても例外ではない。
そのため、なのはの死後、家宝として保管されていた。
しかし、誠也は違った。レイジングハートが認証を受け付けた。
そしてレイジングハートは誠也の相棒になり、誠也は魔導師としての高町なのはを知ることになる。

レイジングハートに頼み、見せてもらったなのはの映像。それは誠也にとって衝撃的であった。
フェイト・T・ハラオウンとの戦い、闇の書をめぐる戦い、管理局地上本部を守る戦い。さまざまな戦いの記録がそこにあり、その記録は誠也になのはへの憧れを抱かせるには十分だった。しかし、誠也はそれ以上に惹かれるものを見つけた。
空である。
レイジングハートから見た視点の映像とは言え、上下に動きまわる視界に高速で次々と変わっていく景色、そして何よりも上に広がる青い空と下に広がる大地と海の風景、それに誠也は強く魅せられた。
自分も曽祖母と同じように飛びたい。飛んでその視界を実際に確かめたい。
そう願うようになっていった。

ただ現実はひどく残酷である。
きっと誰よりも強く望んだ空への渇望は決して叶わないことが分かってしまった。
誠也の空戦適性は零だったのである。
つまりは、飛べないと言うことだ。
しかし、誠也はその結果を知っても努力を繰り返した。
飛行術式を精査し、改良・改善をひたすら加え続け、ついに飛ぶことを可能にした。
しかし、それは誠也の望んだものではなかった。
最大移動速度、時速一キロ。
歩くよりも遅いのである。
できるのはほとんど浮くことだけ。
誠也は努力の結果に打ちのめされてしまった。
なまじ、周囲に空を飛び回れる人間が多くいたこともそれに拍車をかけていた。
アリス、ひさめ、父、母、祖母etc
多くの人が苦も無く空を飛び回っていたのである。
そしていつしか誠也は努力することを止めた。
自分はもう単体では飛べない。曽祖母のように飛び回ることは決してできないんだと。
空への憧れはそのままに、飛ぶことを諦めてしまったのである。

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