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シャンヴリルの黒猫
21話「そのぬくもりを」
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からね。次を左に曲がるわ」

「悪かった。ちょっと速かったな」

 精神的なものと肉体的な疲労にゼエゼエと息を荒くするユーゼリアにアシュレイは声をかけた。

 並んで歩き始めると、ぽつりとユーゼリアが口を開いた。

「アッシュは…」

「ん?」

 それきり押し黙ったユーゼリアに、前を向いたままアシュレイは言った。

「置いていかないよ」

「ッ」

 ハッとこちらを見上げてくるユーゼリアにちらりと視線を送ると、再び前を向いて言った。

「独りにはしない」

 ユーゼリアはうつむいていた。涙を浮かべたまま下を向き、先ほどの恐怖に、その華奢な肩を震わせる。

ぽんぽん

 ユーゼリアの頭に、大きな手のひらが乗った。

(あたたかい…)

 そのぬくもりを、手放したくない。

 前を向いたまま、アシュレイはもう一度言った。



「独りには、しないから」

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