第7話『望まない再会』
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れはお互い様さ」
「へえ?」
「……見ろよ、この力を! 感じろよ、この恐怖を!」
船長の言葉がつむがれる。
もりもりと筋肉がうごめき、もともと細身だったはずの体が図太く、黒く、筋肉質に変化する。
「な」
その変化に声を失うハント。その表情がまた男にとっては痛快そのもの。
「僕はこの4年で成長したんだ! 僕はヒトヒトの実、モデルゴリラを食った悪魔の実の能力者、懸賞金6千万の男! さぁ、僕の名前を言ってみな! 僕は――」
「魚人空手」
男が気づいた時、ハントは既にその懐へと入りこんでいた。いきなりのことで反応すら出来ていない男を尻目に、右足でさらに踏み込み、そこからくるりとその身を回転させる。
「――くろ……え?」
やっと反応を始めた。慌てて拳を振り下ろそうとするが、もう遅い。
「三千枚瓦回し蹴り!」
右足を軸として、覇気により黒く変色した左足をもって大地を蹴り上げる。腰を回して得られるその回転力、伝わる遠心力、大地を蹴った反動力、人体が用いうるありとあらゆる力を余すことなく脚力へと集約し、蹴りの力へと昇華させ、その左足の蹴りを男へと叩きつけた。
瞬間、生物である以上当然に水の塊でもあるその男の水分が爆発。
打ち上げ花火を連想させるほどに空へと蹴り上げられた。
「バカホモ野郎で十分だろう……お前の名前は」
すさまじい滞空時間を経て、男がそのまま水に落ちて、沈む。
人魚がまたそれを引きずりあげて縄で縛るところまでを確認して、ハントは小さく呟いた。
「……クールだ」
きっと自分で自分をほめているのだろう。
ほっと息をついたハントが自分の拳を眺めながら嬉しそうに腰を下ろす。
「俺……強くなってるんだなぁ」
ハントにとって、初めての実戦。
今までにも何度かジンベエにつれられて海賊と戦ったことはあるし、それも確かに実戦ではあったが自分を守る存在がいない場所という意味での、本当の意味での実戦は彼にとって始めてだった。
ハントのもてる力はすべてぶつけた結果がこれ。
覇気に関してまだまだ未熟な彼だったがそれもしっかりと発動した。得意な見聞色、苦手な武装色の両方だ……見聞色のほうは出番があまりなかったが。
完膚なきまでの圧勝。
だがそれでもハントの表情に浮かんでいるのは喜悦の色ではない。
「でも、きっと……まだこんなんじゃココヤシ村の皆は救えない」
記憶にある魚人の海賊たちを思い浮かべて、まだまだ無力な自分に悔しさがこみ上げる。
「……と、人魚さんや魚人と接触したらだめなんだった」
遠目に手を振ってくれている人魚たちから逃げるため、ハントは彼女たちとは反対方向へと疾走を開始するのだった。
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