第7話『望まない再会』
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横を歩いていた男。
どこか男らしくない口調のこの男。
自分の傷だらけの腹を蹴って楽しんでいた男。
4年前、ジンベエが一網打尽にした一味の副船長だった男だ。
「久しぶりだな、お前……俺のこと覚えてるか?」
手下へと人魚を渡した現船長のその男に、ハントは内心で沸きあがるあの時の恨みを抑えつつ、どうにか平静を保って言う。
「はぁ?」
「船長、しってんですか?」
ハントの言葉に、わずかに戸惑いを見せる二人。
本来のハントならこの隙にでも人魚を取り返したいと思うはずなのだが、残念ながら今の彼の胸中は穏やかとはいえず、目の前の男にしか思考が向けられていなかった。
わずかに考え込んだ船長がじっとハントの顔を見つめて「ああ!」と手を打った。
「4年前、僕がいた一味にいた君か!」
「え、昔の船長の仲間ですかい?」
「ああ、そうさ……あのときは僕は副船長でね、船長が欲を出さなきゃ今頃僕は大金持ちだったものさ」
「……」
随分と勝手なことを言っている。
それでも口を挟まずにぼうっとハントが見つめていると、何を思ったか手下の男がなれなれしくハントへと近寄りはじめた。
「ははぁん、昔あこがれていた副船長がお前の目の前に出てきた興奮したか?」
――あと4歩。
「また自分だけうまく儲けようとしやがって、なんてことでも思ったのかい?」
――1歩。
「ったく、一瞬でもここの魚人かと思っちまったじゃねぇか。最初から素直に顔を出してりゃ船長がうまくあんたを使って仲間に戻してくれたってのによぉ」
――0。
ハントの中でカウントが終わった。
手下の男の言葉には耳を一切かさず、ただ自分の間合いへの距離を測っていたハントは間合いに入ってきた男へと容赦なく右足を一歩踏み込んだ。
「ん?」
「――魚人空手『二千枚瓦正拳』」
不思議そうに首をかしげた手下の顔をにらみつつ、その顔面めがけて引き絞った右拳を解き放つ。
「んきゅ!?」
人間の悲鳴とは思えない声をあげて手下が吹き飛んだ。手下がまるで水きり石のごとく水面を何度か跳ねてそのまま水中へと沈んでいく。
「!?」
驚く船長に、ハントが笑う。
「勝手に記憶を改竄するなっての……俺はお前らの仲間になった事実なんかないし、あこがれたこともない。どうやって海軍の監獄から脱出してきたのかは知らないけど4年前のあのときの俺の屈辱、恐怖、絶望を今返させてもらうからな……覚悟しろよ?」
実にうれしそうに言うハントの言葉を受けて、だが船長は笑う。部下たちが一撃でやられてしまい、もう頼るものもないはずのその男は実に愉快そうに笑う。
「おいおい、この4年で随分と成長したみたいだね……だけど、そ
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