第7話『望まない再会』
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陸地では見られないであろう巨大なサンゴに貝殻。逆に陸地にもであるだろう小さなサンゴや貝殻。
それらが建築物に混ざり、人間の里では決してありえない光景を作り出す。
巨大な空気の泡が時折飛び交い、それだけでもファンタジーを思わせるのだが他にも虹を思い出させるような水路が弧を描きそこらに設置されており、その光景を幻想的に彩っていた。
美しくも生命にあふれる外観で見るものをまず虜にするこの景色だが、それ以上に見るものを魅了する姿があった。
ここは人魚の入り江。
正面に位置する入り江で、人魚たちが今日もまたそこで戯れあっている。
「そういえばあの子どうしてるかしら?」
短めの黒い髪と少し細い目が特徴的な人魚がふとした拍子に昔のことを思い出し、呟いた。それを傍から見ていたもう一人の人魚、肩まで伸びた金の髪とぱっちりとした目が特徴的な彼女が目を細めて首をかしげる。
「あぁ、4年くらい前に会ったぼろぼろの子だっけ? ……というか急にどしたの?」
「ほら、最近人間に会ってないから。人間とまともに会話したのってどれくらい前かなって思ったら4年前のことを思い出してさ……懐かしいでしょ?」
「まぁ、そうねー。そういえば今はジンベエ親分と一緒にいるんだっけ?」
「え、里に帰ったって言ってなかった?」
「あれ、そうだっけ?」
「なになに?」
「どうしたの?」
二人して首を傾げる様子に周りの人魚たちも興味がわいたのか首を突っ込み始めた。別に隠すことのほどでもないし、当然聞かれて困ることでもない。彼女たちもすぐに説明を始める。
「4年前私たち海賊につらさられかけたでしょ?」
「あら、そんなこともあったわねぇ」
「ちょっと忘れないでよ、これでも怖かったんだから」
抗議を入れられた人魚は冗談だったのか、舌を出して軽く笑う。
「ふふ、ごめんなさい。それで?」
「その時に出会った男の子の話」
遠い目をして言う黒髪の人魚の言葉に、少しばかり暇をもてあましていた人魚たちが興味津々と言った様子でくいついた。
「へー、詳しく聞かせて?」
「ええ、もちろん」
彼女たちはこうして今日も過ごす。
ただ、話に夢中になりすぎて気づかなかった。
後ろから近づいてくる海賊船の存在に。
ハントがジンベエの下で修行を積んで、4年。
ハントももう16歳になっていた。
魚人島に初めてついたときに比べて容貌も肉体も、随分と成長している。
海の森で、サンゴを見つめながら寝転がっていたハントが体勢を崩さず、ぼそりと呟いた。
「実に……苦しい日々だった。あの日々は忘れないよ……ジンベエ師匠」
遠い目をして、まるで修行を完全に終えたかのような態度をとっている
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