第十七話
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った俺の肩を、レイニーが付いて来いって言う感じで突いてきたので一緒に出かけた。
ここは南トラキアと言うよりは中部トラキアとでも言うべき場所なのか、流れる風もまた違った。
南の乾いた風より幾分やわらかいのは空気中の水分が多いからなのだろうか、頬に当たる風が心地よい。
彼女は小川の土手で無造作に見あたった花を摘むとそのまま俺を連れて村の墓地へと足を向けた。
墓地の外れに囲ってある場所があり、そこには他の墓標よりも少し立派な墓があった。
「帰ってきたら まずはここに来ようと思ってね」
花を手向けた彼女は目を瞑り、祈りを捧げはじめたので俺もそれを見て手を合わせた。
「……王子も祈ってくれてありがとね。ここには、かーさんとミゼとアニーが眠ってるんだ。ミゼとアニーは双子でさ、アニーは悪戯好きで小さくてかわいくてさ。ミゼは王子みたいにって言っちゃあ王子に失礼かもしれんけど頭のいい子でね」
そこまで言うとレイニーは鼻をぐずらせて
「王子にさ、2人の面影重ねちゃってずっと楽しかったんだアタシ……。しめっぽくなっちまってゴメンよ」
俺はレイニーを抱きしめてやった。
彼女がここで生まれ育った頃の家族は、父親と呼んではいけないあのひとしかもう居ないんだもんな。
優しくしてやったら、それから毎晩抱き枕にされて閉口したのは秘密。
だってこの人怪力だから、時々加減を誤って酷い目に遭わされるんですよ!
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