第十七話 お玉、フライ返し
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也の母親である。
「美沙さんは変わらずお若いようでなによりです。」
「そう?ありがと。誠也君は半年でさらに口が上手くなったのかしら?」
「まあ、大人たちの中で仕事してますし。でもお世辞ではありませんよ。」
「あらあら。ならまだ看板娘としてやっていけるわね。」
誠也の言うことに嘘偽りはない。
美沙の年齢は、ここで大っぴらに言うのは避けられるべきだが、和也を産んでいることから推察されるべき年齢であることは確かである。
しかし、この女性がそんじょそこらの女性とは異なるのは十五歳の子供を産んでいるとは思えないその美貌である。
まず見た目からして二十代の前半にしか見えず、しかもその容姿、スタイル共に未だ現役と言っていいだろう。
要は、看板娘として通るほどの美貌は持っているということである。
ちなみに、美沙は結婚してから年を取っていないと滅法の噂である。
「娘とか言う年齢じゃ――っ!」
和也は母親に文句を言おうとするも、ドカッ!と、凄まじい衝撃が和也の頭に走ったことによって和也の言葉は中断させられる。
カランカランと音を立てて地面に転がるのは―――――お玉。
「……美沙のことを悪く言うんじゃない。」
その声は厨房の方から聞こえてきた。
そこまで大きな声ではないものの、非常に良く通る男性的な声で、聞く人によっては声だけでもその人に惚れてしまうこと請け合いだろう。それほど良い声であった。
「あ、あはは。剛士さんも相変わらずですね。」
直撃する瞬間を目撃していたアリスは、前回会った時とさほど変わっていない様子の和也の父親、高町剛士の様子に苦笑するしかなかった。
「な…にしや…がる。」
「……妻に甘く息子に厳しく。俺の基本方針だ。」
激痛で呻く和也にそう言いきる父親がいた。
和也も必死の思いで立ちあがり叫ぶ。
「だからって息子にお玉投げつける父親がどこに――どわぁ!」
またも高速で飛来したお玉を、今度こそキャッチする和也。
ちなみに、お玉を高速で飛ばすのは通常不可能である。
特にお玉の形状から考えて、飛んでいる間減速しやすいうえにまっすぐ飛ばないと考えられるからである。もしかしたら木べらはできるかもしれないが。
つまり、剛士の持っている投擲技術が並大抵のものではないと言える。
そしてはっきり言ってしまえば、キャッチできる和也も只者ではなかったりする。
「……店の中で叫ぶな、バカ者。」
「叫ばせてんのは――」
お前だ!その一言を発することなく和也は沈む。
なぜなら飛来してきたフライ返しが和也の頭に直撃したからである。
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