暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第六話 学院に伸ばされる手
[10/10]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
んだよ!」
「っ!?」
「失敗すると思うんなら、解決策を考えな! 解決策が思い浮かばないんなら、失敗しないよう自分も参加しな!!」
「そ、そんな無茶な」
「無茶でもやるんだよ!」

 前触れもなく始まった嵐のような言い争い(しかし一方的な)に、アニエスたちが呆然とする中、険しい顔でコルベールを睨みつけていたロングビルの表情が不意に柔らいだ。

「……安心しな、何も一人でやれとは言わないよ。あたしも手伝ってやるさ」
「……ミス」

 ロングビルがコルベールから離れる。ロングビルという支えを失くしたコルベールが、ズルズルと壁を滑り落ちていく。だが、コルベールは座り込むギリギリで足を踏ん張り立ち続けた。
 生まれたての子鹿のように震える足で立つコルベールを横目にしながら満足気に頷いてみせたロングビルに、アニエスが何処か引いたような口調で声を掛ける。

「……あ〜……その、ミス・ロングビル?」
「あら? 何ですかミス・アニエス」
「……アニエスでいい。それより先程の『白炎のメンヌヴィル』とは?」
「凄腕の傭兵ですよ。……桁違いの実力と頭の切れの持ち主であり、相手が女子供であろうと顔色一つ焼き殺すような残虐な男」
「それが奴らの頭か」

 ロングビルの説明にアニエスは顔を顰める。ロングビルの話を聞いて、作戦の実行に躊躇いが出来てしまった。しかし、再度作戦を考える時間はもうない。どうすればいいのだと、再度頭を抱えそうになる。

「時間がもうありませんし、仕方ありませんね。アニエスたちはキュルケが考えた作戦を実行してください」
「は? しかしあなた今、作戦は失敗すると」
「メンヌヴィルがいれば、ですよ。メンヌヴィルはわたしたちが相手します。あなたたちは残りをお願いします」

 訝しげな目を向けるアニエスに、ロングビルは手をひらひらと振りながら笑ってみせる。

「わたしたち(・・)?」
「そう、わたしと――」
「は?」

 ロングビルがゆっくりと視線を移動させるのに合わせ、アニエスの視線も動き、

「え?」

 壁に背を付け呆然と自分の顔を指差すコルベールと視線が合う。

「ミスタ・コルベールで」


[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ