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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第六話 学院に伸ばされる手
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頷き、三つに別れ走り出した。






「…………」

 妙な気配を敏感に感じ取り目を覚ましたタバサは、飛び起きることなく、ゆっくりとした動作でベッドから起き上がった。すぐそばに置いてある自分の杖を掴むと、ベッドから降り立ち、素早く着替える。
 妙な気配は中庭から感じる。タバサは気配の正体を確かめるかと考えるが、直ぐにそれを否定すると、部屋から出る。行き先は下の階。数少ない友人であるキュルケの部屋。キュルケの部屋の前に着くと、素早くノックをする。暫らくすると、ドアの鍵が開く音と共にドアが開き、ネグリジェのみ身に付けたキュルケが出て来た。ふらふらと身体を小さく揺らしながら立つキュルケは、寝ぼけ眼をタバサに向ける。

「……どうかしたのこんな時間に……っあ………ふ……日が昇ってからじゃ駄目なの?」
「緊急」
「? 何が」
「妙な気配」
「気配?」

 瞼が重そうにしていたキュルケだったが、いつにないタバサの様子と言葉に異常を感じると、急速に意識をハッキリとさせていく。キュルケが完全に目を覚ましたのを感じると、タバサは視線を中庭の方に向ける。それを追うようにキュルケも中庭に視線を向けると、サラマンダーが同じように中庭の方角に顔を向け、低い唸り声を上げていた。

「友好的ではないようね」

 ふんっ、と一つ鼻を鳴らしたキュルケは、部屋の中に戻ると素早く着替え始めた。服を着込み終え、杖を手に取ると、下から扉が破壊される音が寮内に響きわたった。
 階下から聞こえた破壊音に驚く様子を見せることなくキュルケはタバサに振り向く。

「迎え撃つ? それとも――」
「引く」
「了解」

 戦いの経験がタバサに劣ると理解しているキュルケは、タバサの指示に素直に頷くと、窓のドアを開け飛び降りた。地面に降りると、直ぐに二人は茂みに姿を隠す。周りの様子を確認すると、二人は寮に背中を向けると駆け出した。
 寮から響き始めた、少女たちの甲高い悲鳴を背中に受けながら。







「……アルビオンの手の者か」
「アニエスさま無事ですか!」

 血の滴る剣を片手に、アニエスは赤く染まった身体を床に投げ出した男の横に立っていると、後ろから声を掛けられた。

「無事だ。こちらには二人きたが、そちらは」
「こちらも二人です。片付けましたが、一人負傷しました」

 同じように血で濡れた剣を持って声を掛けてきたのは部下の一人だった。上半身を濡らす赤いものは、返り血だろう。

「負傷の程度は」
「アンヌが魔法を避けた際に足を捻った程度です」

 アニエスは倒れ伏す男から目を離さず部下の報告を聞く。

「二分で完全武装」
「ハッ!」

 指示を受け、部下が部屋に戻る。死体から視線を外すとアニエス
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