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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第六話 学院に伸ばされる手
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何を言っている! ふざけるのもいい加減にしろ! お前たちは男子生徒だけでなく女生徒も戦場に送りつけるつもりかっ!!」

 銃士隊の隊長……アニエスの言葉に誰よりも早く反応し、反対したのは、理不尽な命令を受けた女生徒ではなくコルベールだった。女生徒たちが未だ何が起こっているのか分からず混乱する中、コルベールはアニエスに詰め寄っていく。

「いいですか! まだわたしの授業は終わっていないのです! あなたが陛下の命令でここに教練をしに来たのはいいですが、わたしの授業を勝手に終わらせるようなことは許しません! 戦争ごっこがしたいのならせめて授業が終わってからにしてください!!」
「……戦争ごっこだと」
「ひっ!」

 指を突きつけながら迫って来るコルベールを、アニエスは剣を突きつけることで止めた。

「我々の教練を戦争ごっこと……我々がメイジではないからと思って舐めるのならば、それ相応の覚悟をしてもらうぞ」
「そ、そんな、わたしは別に……」

 凄みのあるアニエスの声と喉元に突きつけられた刃の感触に、コルベールの声を尻すぼみに消えていく。冷や汗を流し、ブルブルと震え出すコルベール。その様子にフンッと鼻を鳴らしたアニエスの顔が不快気に歪む。臭ったのだ。コルベールの身体から……マントから。アニエスが大ッ嫌いな臭いが……。

「お前……『炎』の使い手だな。ものが焼ける臭いがする……。いいか、わたしはメイジが嫌いだが、その中でも特に『炎』の使い手が一番嫌いだ」

 喉元に突きつけていた剣先が更に押し込まれ、肉が内側に押し込まれる。冷たい刃の感触と喉を抑えられる苦しみに顔を歪めさせるコルベールの身体から、更に冷や汗が溢れ出し、震えも激しくなっていく。

「今後わたしたちの邪魔をするようなことがあれば……」

 ゆっくりと剣を引いたアニエスが鞘に剣を収める。その間もアニエスの目はコルベールを捉えて離さない。燃えたぎるような憎悪に染まった目がコルベールを見つめる。

「ただではすまないと思え」
「……ひ……ぃ……」

 剣が鞘に収まると同時に、腰を抜かしたかのように床に尻もちをつくコルベールに不快気な視線を向けたアニエスは銃士隊員を連れ歩き出した。その後を、椅子から立ち上がった女生徒たちがついて行く。教室から出る際、女生徒たちは教壇の近くで腰を下ろすコルベールにそれぞれ軽蔑の視線を向けた後歩きり。あっと言う間に女生徒たちは全員教室からいなくなった。

「……君と……わたしのどこが似ているんですか……シロウくん」

 コルベールを除き誰もいなくなった教室の中。コルベールは床に座ったままの状態でポツリと小さく呟いた。













 未だ月が空の上に輝く時間。銃士隊が宿舎として利用して
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