第六章 贖罪の炎赤石
第六話 学院に伸ばされる手
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「――で、あるからにして、これは――」
男の生徒や教師が戦争に出征したため、出席者の姿どころか授業自体さえ少なくなった今日この頃。久しぶりに行われた授業で教鞭をとっているのは……。
「コルベール先生」
禿頭の教師……コルベールだ。
男子生徒がいない教室の中、残った女生徒たちに対し授業を行うコルベールに対し、一人の女生徒が声を掛けた。
「何だねミス・ツェルプストー?」
コルベールに声を向けられ、燃えるような赤い色を持つ髪を揺らしながら立ち上がったのは、挑発的な肉体を持つ女生徒。キュルケは椅子から立ち上がると、教壇の上に立つコルベールに非難めいた目を向けながら、苛立った調子の声を上げた。
「戦争中だというのに、何故あなたはまだ授業を続けているのですか?」
「……何故と言われても……教師が授業をするのはおかしいですか?」
非難めいた視線と声を向けられているにもかかわらず、平然とした様子でキュルケの問いに答えたコルベールは、それだけ言うと背中を向け、何事もなかったように授業を再開しようとする……
「ええおかしいです」
が、それをキュルケは再度引き止めた。
背を向けかけた姿で止まったコルベールがゆっくりと振り返る。その顔にはうっすらとした笑みが浮かんでいた。
「何処が……かね?」
「教師だけでなく生徒も戦争に向かっているというにもかかわらず、学院に引きこもって授業を行っているところです」
「先程もいいましたが、教師が授業をするのが――」
「怖いだけじゃないんですか?」
鋭い刃のような声がコルベールの言葉を止める。
コルベールの笑みが……一瞬歪んだ。それは図星を突かれたからか? それとも……。
「……そうですね。その通りでしょう。わたしは戦が怖く、臆病者です」
「なっ……!」
「ですがそれの何が悪いんですか?」
「っ! あなたは……っ!」
自分のことを臆病者だと言い切り。そして、それについて全く恥じる様子が見えないことに、キュルケは呆れを通り越し怒りを覚えた。
怒りを感じるままに何かを言おうとしたキュルケだったが、形になる前にそれは教室のドアが開く音によって遮られることになる。
「なっ、何ですかあなたたちは」
前触れもなくドアから入ってきた者たちは、身体に鎖帷子を身に付け、腰には長銃と拳銃をさしている。そして全員が女性であった。先頭を歩くその集団の長と思われる女性は声を掛けてきたコルベールを無視し、そのまま教壇に上がると、教室にいる女生徒たちに向かって声を上げた。
「我らは女王陛下の銃士隊だ。陛下の命により、お前たちを戦えるようにするためここに来た。早速だがこれより軍事教練を行う。直ぐに正装し中庭に整列しろ」
「っ! 馬鹿な!
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