第6話『力を求めたその先は』
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の動きに対応できなかったこの男は「げ」と言葉を漏らして、体勢が崩れる。俺は体勢が崩れて反応できない男の頭部へと木刀を振り下ろした。
男がいたそうにうめいている。
本気で振り下ろすのが怖くて、結構力を抜いてしまったからだと思う。男は痛そうにしているものの流血していないし、意識だってしっかりしてるようだ。
「……」
木刀を海に捨てて、歩く。
これからどうすればいいんだろう。
ただ、もう何をすればいいかわからなかった。
と。
「ガァキィィィ……あんまし大人をなめてんじゃねぇぞぉ!!」
羽交い絞めにされた。
男の腕が首にきまってる。
「が……は」
股間をけってやろうと足を振りかぶって……やめた。
視界がにじむ、酸素不足だろうか、それとも苦しいからだろうか……そう思ったけど、違った。
――なんだ、涙か。
自分でも笑ってしまうくらいに情けないと思う。
抵抗する気力も起きないんだから。
まだ村の人がいる、俺はあの人たちを助けるために動かなければならない……だけど、もう本当にどうすればいいのかわからないから。
この涙はいったい何の涙なんだろうか。
死ぬ恐怖の涙?
みんなを救えない無力な自分に感じる悔しさの涙?
きっとそれらもあるけどそれ以上になにかがある気がする、よくわからない。
「ははは死ね! 死ね!」
強くなりたい……強くなりたかった。
少しずつ意識が朦朧としてきて視界も暗くなってきた。
ベルメールさんの顔が浮かんだ。
次にノジコとナミ。
お、今度はゲンさん。
ドクターに、村のみんな。
楽しかったあのころにはもう戻れそうにない。
「……」
ああ。
わかった。
なるほど。
俺が泣いてた本当の理由がわかった。
俺、まだ。
あの人たちの空気にまた触りたい。また笑いたい。死にたくなかったんだ。
今更抵抗しようとして、足に力をこめるけど、だめだった。
力がこもらない。
これはまずい。
薄くなる意識とともに「ふげ」
変な声とともに首の圧力がなくなった。
気づけば腰が地面に落ちていた。
「がは……はぁ……はぁ」
慌てて酸素を求めつつも、何が起こったんだろうかと首を上げて、すべてわかった。
「まったく、お前さんは厄介ごとに巻き込まれやすいのう……才能か?」
笑顔のジンベエさんがそこにいたから。
海岸。
すべての事情を聞いたジンベエが難しい顔でため息を落とした。
「それで、お前さんはこれからどうするんじゃ」
ハントはジンベエから数歩距離を置いて、そっと顔を伏せる。
そのまま両膝をついて両手を地面につき、
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