第6話『力を求めたその先は』
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どなく、大きなボートと表現したほうが近いのかもしれない。
そこに、彼らはいた。
人魚をさらおうとしていた海賊たち一行、それにジンベエとハントだ。
海賊たちは全員死んではいないものの、今のところ誰一人として目を覚ます気配はない。ジンベエが彼らを成敗してもう5日になるというのに誰も目を覚ます気配がないのはそれだけ彼らがあまり強くなかったのと、それ以上にジンベエの一撃が強烈だからだろう。
意気揚々と浮力の高い木片、クウイゴスをあやつり海中を浮上していくジンベエの後ろ姿に、ハントがこれまた何度目だろうかという頭を下げた。
ジンベエはもうそれに目を配ることすらなく首を横に振る。
「くどい、わしは弟子をとらんし、そもそもお前さんの面倒を見てやる義理もない。海賊と一緒に海軍へ連れて行ってやるだけでありがたいと思うんじゃな」
とりつくしまもない。
うなだれるハントに、ジンベエも不思議に思ったのか一瞥を送った。
「そもそも、お前さんなんでわしの弟子になりたいんじゃ」
その問いに、ハントがテンションを一気にあげて立ち上がった。
――しまった。
自分で言った瞬間から既に後悔をはじめたジンベエをよそにハントは目をきらきらとさせた。
「魚人空手に惚れたからです! 単なる正拳突きじゃなくて空中でなにかがはじけるあの感じ……めちゃくちゃ格好良かったです! 正直あのときの俺の意識なんて朦朧としてしてましたけど強くなるならアレしかないって思いました!」
「……」
ジンベエの反応はない。だが、どうやらうれしかったようでジンベエが耳をピクピクさせている。自分でもその喜びを隠しきれないと判断したのか、わずかに顔を背けて、言う。
「……ふ、ふん。ほめてもなんもでん! お前さんが魚人空手に惚れたというのはわからんでもないが、どうして強くなりたいんじゃ? ただ格好良いからという浮ついた理由では魚人空手を覚えることなど――」
「――助けたい人たちがいます」
たしなめるようなの言葉を割って、ハントが言った。その目は鋭く、ともすれば怒りすら感じられるほどに真剣な目だ。
「海賊に支配された俺の故郷の村を救うためです……彼らを助けるため、自分が守りたいと思ったものを守るため……海賊ばっかりのこの時代で、強くないとそれも出来ない、そう思ってます」
――だから強くなりたいんです。
ジンベエを見つめ、言い切った。
「ふ、む。いいたいことはわかるが……海軍に言えば村を救ってもらえるじゃろう?」
「……」
ハントの目が点になった。言葉を失い、視線をさまよわせ「え?」と首を傾げる。
「?」
その動きの意味がわからずに、ジンベエもまた同様に首を傾げのだるが、すぐに気づいた。
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