第6話『力を求めたその先は』
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明かないと判断したジンベエが、歩くのをやめてその場に腰を下ろした。
「?」
急な行動に首をかしげるハントだったが、ジンベエが目を閉じて黙り込んでいるからなにか意味のある行動なのだろうと思い、同じようにその場で腰を下ろす。
「……」
「……」
どれほどの時間がたっただろうか。ふとジンベエの腕に小さな重りが寄りかかってきた。
「?」
大して興味もなさそうに首をかしげ、そっとその腕へと顔を向けて小さく微笑んだ。
「……ほんとに、変わった子供じゃ」
己の腕へと寄りかかってすやすやと眠ってしまっているハントの寝顔はまだあどけなく、子供そのもののソレでしかない。なのに、この子供は普通の子供とは違う。
「普通、魚人の腕に寄りかかって寝れるもんかのう?」
魚人である自分を恐れる様子を見せない。
海軍本部にいくことを拒否する。
しかも政府公認とはいえ海賊であることに変わりない自分の弟子になりたいと何度も懇願してくる。
変わっているというか、むしろおかしい。
ジンベエの感覚からすればそうとしか思えなかった。
最初みた時から傷だらけで、ついさっきまでマーメイドカフェ店員の女子寮、その一室でずっと寝ていたのに、たまたまジンベエが顔を出したらベッドで寝ていたはずのハントが飛び起きてずっとここまで「弟子にしてください」とお願いしながら歩いてついてきた。歩く中で何度か傷を抑えてしかめっ面を作っていたのを見て、小一時間も歩けば勝手にあきらめるだろうと思っていたのに、ずっとついてきて気づけば海の森だ。
「……本気、なんかのう」
ずっと歩いていたから傷が熱をもって痛むのだろう。ハントの表情がいつの間にか苦しそうなソレへと変化していた。ジンベエは寝ているハントの頬をつつき、そっと撫でる。
苦しそうだったはずの表情が少しだけ安らかなものへと変化。
「……強く、なるんだ」
小さな寝息ととも強い言葉を落とす。表情とは裏腹の、意思にあふれた言葉に、ジンベエの目がかすかに見開かれた。
こんな時代だ、この少年も何かを抱えているのかもしれない。だが、こんな時代だ、むしろつらいことを経験せずに生きている人間のほうが少ない。
考えるように視線をさまよわせ、それからジンベエは首を横に振ってため息を落とす。
「まぁ、いうてもわしが面倒を見る義理はない……悪くおもわんでくれよ」
自分の中何らかの決定を下したジンベエはハントを起こさないようにそっと抱え、魚人島へと歩き出すのだった。
その動きは柔らかく、優しく。
とても海賊のものとは思えない。
海中。
空気の膜に包まれて徐々に高度を上げていく船があった。
船の規模は小さい。
船室な
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