6.イベントの時は下らない物でも欲しくなるから不思議
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開く。外を流れる涼しい風が屋内の蒸した空気で熱くなった体を冷やしていく。……ん?
気が付いたら服の裾を三人娘が摘んでいた。本当に今更。俺が目を向けると慌てて放れていったけど。
まあ、暗かったしねぇ。怖かったしねぇ。
空気の読める俺はここで根掘り葉掘り聞きはしない。スルーする。
「ここからなら花火が良く見えるらしいよ。すずか、あと何分?」
「えっとね……あと三十秒くらいかな」
「ギリギリじゃん」
屋上の縁をぐるりとまわって川がどの方角かを調べる。事前準備を怠りすぎたな。大体の見当をつけてメンバーを読んだ時点で残り十秒。何を話すでもなく、視線はすずかの腕時計へ。
そして、零になった瞬間視線を上に向ける。
ぱーん、と。まずは一発。赤から黄色のグラデーションが美しい花が咲く。
そこからは立て続けに。どの花火がどんな特徴なのかを詳しく見る暇も無いほどに、視界いっぱいに光の粒が舞う。咲いた瞬間から消える瞬間まで目が離せなかった。
しかし、ふと、俺は夜空から目をはずし、隣を見る。
そこにある三つの顔は、どれも楽しそうに嬉しそうに空を見上げていて。
また来年もここにきて、また来年もこの表情が見たいな、と思った。
出来ることなら、その先も。
そんなことを考えた自分が少しおかしくて、気を取り直すように再び空を見る。
並んで咲くあの花々は、やはりとても綺麗だった。
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