6.イベントの時は下らない物でも欲しくなるから不思議
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パチやるらしい。
個人的にはただ見ているだけの打ち上げ花火よりも手持ち花火の方が好きなのだが、空に大輪の花が咲くのもまた一興だろう。意味分かんねぇ。
「それじゃあ、あたしたちも行きましょうか」
「待った!」
人の流れに乗って進もうとしたアリサをポージングしながら呼び止める。きょとん顔で振り返ると、
「何よ。いそがないといい場所とられちゃうじゃない」
「もう十分前だから目ぼしい場所は取られてるだろうし、立ち見しようにも俺らの身長じゃ見え辛い筈だ」
「じゃあ、どうすんのよ?」
「私にいい考えがある」
ということで一旦祭りの会場を離れる。花火をするはずの場所から遠ざかっているので疑問の声が出もしたが、いいからいいから、と流す。
いくら夏は日が落ちるのが遅いといっても、この時間はもう真っ暗だ。これが都市部だったら車のライトやビルのネオンなどで明るいのだろうけど、我らが海鳴市は自然を大事にする路線で売っているのでそういうのはあまりない。暗い夜道は街頭が頼りになる。
「いいかいみんな、夜遅くになってから一人で出歩いちゃいけないよ。どうしても歩かなきゃいけないような場合は、出来るだけ灯りと人通りの多い道を歩くんだよ」
「「はーい」」
「いいからさっさと行きなさいよ」
「うわーん、アリサちゃんのいけず〜」
「「「…………」」」
「はいごめんなさーい。こっちですよー」
移動中は出来るだけ会話を絶やさないようにする。俺から見てもかなり大人びている彼女たちだが、所詮はまだ小学生。聴けば否定の言葉が返ってくるだろうが、真っ暗な道は怖いだろう。
だから出来るだけ恐怖を感じさせないように、自ら道化になって場を和ませているというのを、この子達は分かってくれるのだろうか。分かってくれなくてもいいけどね。気遣いは見返りを求めたらダメなのさ。
大体五分くらいの道程の後、到着したのはとあるビルディング。二階部分に看板が貼ってあるけれど暗くて読めない。
「ケンジくん?ここになにかあるの?」
「うん。実はね、ここは花火が良く見える隠しスポットなんだよ」
答えつつ、がちゃり、と鍵のかかっていないドアを開ける。無用心だよな。いくら海鳴が平和だからって。
入ってもいいのか、とここまで来て迷う良い子ちゃんたちの背中をぐいぐいと押して建物の中に侵入する。当然入っちゃダメなんだけど、なんかあったら連帯責任ということで一つ。
階段を昇る。壁に跳ね返って音が響く。わりと怖い。あと夜の建物というのは無条件に怖いので相乗効果だ。違うかな。
「「「…………」」」
すっかりメンバーが押し黙ってしまった。下手に何か話そうものならその声に驚いて足を滑らせて階下へごろごろー、というのもあるかもしれないので俺もシャラップ。
「とうちゃくー」
屋上の扉を
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