6.イベントの時は下らない物でも欲しくなるから不思議
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通しなんだけどね。まるっとすりっと。
一等の、犬の柄が書かれたマグカップ。あれが最後の獲物だ。
とれるかなー、と考えつつ、弾を装填する。流れ作業のように構えて、引き金を引く。
パコーン。
「あ、やった」
「ガハハハ!今日はもう赤字だな!もってけドロボウ!」
「じゃあお構いなく」
お目当てのお目当てのマグカップを奪取する。例によってくるっと回って後ろにいた少女に差し出す。
「ほい。あげる」
「……なんで?」
「たまたま取れちゃったから。いらないからあげる。感謝しろよ」
しっかり選び取っておいてどの口が、と思いはしたが、ここは勢いだけで乗り切ることにする。
目線を目の前にあるマグカップと俺の顔に何度も行き来させ戸惑った表情をしていたアリサだったが、焦れた様にずいっとブツをさらに押し出すと、おずおずとだが受け取り、
「ありがと」
非常に早口で、こちらを見ずに言ったので普通なら伝わらないはずだが、しかしこう見えて俺は空気が読める大人。「使ってくれたら嬉しいよ」とだけ言って、手にしていた銃をおっちゃんに返却した。
「もう二度と来るんじゃねぇぞ!」
去り際におっちゃんが笑いながら言うので、
「また来年を楽しみにしています」
笑顔で返しておいた。
いやー、もうウハウハだね。こんなに上手くやれるなんて。これがビギナーズラックってやつなんだな。
その後、頬に大きな縫合痕のあるお兄さんがいるヨーヨー釣りや、サングラスをかけてスキンヘッドのおじさんがマスコットの金魚すくいの屋台を覗いて歩いた。
なのははモヒカンのおっさんが風貌に似合わない丁寧な手つきで完成させたわたあめをおいしそうに食べていたし、すずかは眼帯を装着したおじいさんが慣れを感じさせる鮮やかな動作で作り上げた輝くりんごあめをぺろぺろと舐めている。どちらもちょっともらったがうまかった。
アリサは糸目のおねえさんが職人としか思えない曲芸じみた動きで仕上げたたこ焼きを頬張っている。一個ねだって食べさせてもらったけど熱いのなんの。慌てて近くで両掌に銃創のあるおばさんが売っていたラムネに飛びついた。
今はすこし火傷した舌をオカマの人が並べていたチョコバナナで冷やしているところだ。ひんやりしてて気持ちいい。それに甘い。
「あ、そろそろ時間だよ」
手首に巻いた腕時計を見たすずかが全員に聞こえるように言う。横から覗き込み長針と短針の位置を確認する……あと十分くらいだな。
周囲の喧騒がやや大きくなったのはこのことに何か関係があるのだろうか。不規則だった人の流れが徐々に一つのほうへ向いていっている。
もうすぐでこの夏祭りの大トリを飾るメインイベント、打ち上げ花火が始まるのだ。
この近くを流れる川の河川敷で、合計何発かは知らんが、とにかくドン
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