第十三話
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俺はいま、トラキアの国名であり同名の首都にいる。
それはトラキア半島の南北を統一した英雄が歓呼の声に迎えられた華々しい凱旋。
だったらいいですよねー!
実際はミーズ城を北トラキア連合へ返還してもらう条件の一つとして人質になって送られたのでした。
ミーズ城というのは北トラキアと南トラキアを結ぶ交通の要衝に建てられた城塞であり、両の地を分断する壁の役割を担う戦略上の重要拠点である。
この城塞を巡っては何度となく小競り合いも会戦も行われており、北トラキア連合としては侵略者を阻む絶対防衛線。
南トラキア側(以後トラキア王国の呼称に統一)にとっては、父祖の地に居座るグランベルの手先となった裏切り者どもが不当に築いた憎しみの象徴。
互いの存在と未来を懸けて流された血の上に建つ城塞であり、この城塞を制した勢力が両トラキアの勢力争いで優位に立つと言われていた。
グラン歴747年の当時、ミーズ城には困窮し逃散した南トラキアからの農民集団が保護してほしいと頼ってきた。
それが受け入れられたところトラキア王国はこれを許さず、身柄を引き渡すよう要求してきた。
ミーズの太守は北トラキア連合に諮ってから返答したいと応え、トラキア王国側も期限を切って太守の返事を受け入れた。
その事態を知らせる早馬がミーズ城から出されてから数日、トラキア王国側は一気に軍を進めミーズ城を奪った。
まともにぶつかったならばミーズ城に駐留する兵力で防ぎきることは簡単であっただろう。
しかし、保護を求めてやってきた農民集団は実は疫病に感染した疑いのある者の中からわざわざ選び出され、疫病で亡くなった者達の衣類や寝具などをはじめ感染を広げるための手段を携え、教え込まれて送り込まれた工作員であったのだ。
既に疫病が、城塞に駐留する兵にも、兵を相手の商売を目的に移住してきた人々を祖にする一般市民にも蔓延っており、それゆえに時間稼ぎの返答をした太守であったがそれを見透かされていたのだ。
駐留していた北トラキア連合の兵は病の為弱り切っていたため、簡単に敗れ、城は陥ちた。
トラキア王国側の誤算は、人質にして有利な交渉の材料にしようとした太守とその家族が自害、あるいはこの疫病で命を落としていたことだ。
当然この事態に怒り心頭の北トラキア連合はすぐさま奪回・討伐軍を編成し、ミーズ城北部のマンスター方面へと軍を送り、西側の自由都市にも硬軟交えた工作を加えトラキア王国への圧力を高めた。
マンスターに集まった北トラキア連合の軍勢は義憤を感じて立ちあがった義勇兵が許可なく集まり続け、当初の予定よりもその規模は大きく膨れ上がり、有機的な運用や一糸乱れぬ行動が行えるような統制は難しくなっていた。
その状況を戦機と見てトラキア王国側
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