第5話『その男は』
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ないように庇ってくれている嘘だ。
それを感じた。
ただ「そう、ですか」とだけ呟く。
「そんなことより、君は大丈夫?」
「そうよ、そんなに酷い怪我をしているみたいだし……ごめんね、私たちに知識がないばっかりに」
「……」
本気で言っているその顔に、俺は反応できなかった。
信じられない思いだった。
この人たちは俺の心配をしてくれている、しかも本気で。
彼女たちをおびき寄せた餌である俺を。
海賊に攫われて、これからどうなるか全くもってわからないであろう不安を一切みせず。
普通、そんなことが出来るのだろうか。少なくとも自分には無理だ。
出会う一瞬前までココヤシ村を襲ったような魚人たちを思い浮かべていた俺が恥ずかしい。
「……ありがとう、ございます」
なんと言えばいいか分からず、でも気遣ってくれていることにだけはお礼を言わなければならないと思った。
もしかしたらその想いが伝わったのかもしれない。
「どういたしまして」
二人が声を合わせて微笑んでくれた。
この人たちをどうにかして逃がしたい。
心の底から思う。
あんなばか海賊たちの金の道具になんかなっていいはずが無い。
けど、また俺はなにもできない。
自分の動かない体がうらめしい。
俺は、なんて弱いんだろう。
ココヤシ村でも、ここでも。
俺がもっと強かったら、村のみんなを、ここの人魚さんたちを守れるくらいに強かったらきっともっと色々とやれることがあるはずなのに。
だから、思った。
強くなりたい。
大切な人を守れるくらい。守りたいと思った人を守れるくらい。
強くなりたい。
この人たちを逃がせるくらいに、ココヤシ村の皆を助けられるくらいに。
本気で、そう思った。
「おう、お楽しみ中悪いねぇ」
「っ」
首を動かせないから顔はわからないけど声でわかる。
ばか海賊のばか船長だ。
……もっと勉強しとけばもっといい悪口もあったんだろうな。ナミの勉強に少しでもついていとけばよかったかな。
まぁ、いいや。
足音がいくつもあったから多分他にも何人かいるんだろう。
「おう、お前の出番だ、つれてけぇ」
動かない体じゃあどうしようもない。
また頭を殴られて、ブラックアウト。
「最後の釣りだ……予定よりも大掛かりのやつで準備に時間をかけちまったが、へへへ腕がなるねぇ」
聞きたくもない計画が聞えた気がした。
海賊たちの最初のつりは大成功だった。
いや、副船長風にいうなら大成功してしまった。
何せ一味の中でも最も頭のきれる副船長がシャボンディ諸島で聞き込みを重ねて計画にも思案を重ねて生み出されたのが今回の釣
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