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シャンヴリルの黒猫
16話「ユリィの常識講座@“フリークエスト”」
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るだろう。人間は魔力の総量が少ないため、そういう――つまり遣い魔達の感覚からすると“みみっちい”――作業ができることが、“便利”だ。そう言う意味で言った言葉だが、ユーゼリアには“魔法”の存在を忘れたアシュレイが、“魔法の存在と使い道”という意味で“便利“と言ったと勘違いし、やや得意げにした。

「ふふ、そうでしょ? アッシュはスープ飲む?」

 粉末状のスープの素をコップに入れると、鍋からお湯を注いだ。

「はい」

「ども。……あっづ!!」

「あ、熱かった? ごめん…て、あれ? そんなに熱い?」

 川に顔面ごと突っ込んでいるアシュレイに、不思議そうに声をかけた。熱いには熱いが、そんなのたうちまわるほどではない。

 その“のたうち回っていた彼”は顔を水面から上げると、恨めしげに言った。

「…俺、猫舌なんだよ」

「…………アッシュが?」

「なぜそんなに意外そうな顔をする!」

 俺にだって苦手なものくらいある。
 憮然とした顔で言うアシュレイに、ユーゼリアはいい繕った。

「なんかアッシュってなんでも出来そうな気がするんだもの」

「情けなくて悪かったな」

「もう、そんなのじゃないってば」

 ぶすっと言い返すと、アシュレイはちびちびとスープを飲み始めた。
 相変わらず熱い…が、旨い。簡易食にありがちなしょっぱすぎる味でもなく、寧ろ野菜の甘みが引き立てられている。

「……旨いな」

「え、ほんと? 嬉しい。それ私が作ったのよ」

「ほう。器用なもんだ。しょっぱすぎなくて美味しいよ。どうやるんだ?」

「ふふー。それは企業秘密であーる」

 アシュレイの気を悪くしたかとおろおろしていたユーゼリアだが、その言葉に気分を良くし、鼻高々に胸を張る。案外あっさりと引き下がったアシュレイに、もしや自分の気をそらすために言ったのかと少々不安になったユーゼリアだが、少しずつではあるがひと口ひと口を本当に美味そうに啜るアシュレイを見ると、まあいいかと笑みを浮かべた。

(思惑通りになるのは癪だけど、いいわ。今回は乗せられてあげる)

 アシュレイが何を思ってさっきの台詞を言ったか知らないが、それを聞いてユーゼリアが嬉しくなったのに間違いはなかった。

「じゃ、さっきの素材出して。洗いましょう」

「洗う?」

「ギルドの受付嬢の身にもなってみなさいよ。血みどろの毛皮なんて、いくら仕事でもできたら触りたくないでしょ? それに臭うしね。だから洗うのがマナーよ。まあ、たまにそのマナーの悪い冒険者もいるけど」

「ギルドに渡すのか」

「“フリークエスト”っていってね、特に掲示板に張り出したりはしないけ
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