第二幕その二
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でしまっていたんだよ!」
「恐ろしい!」
それを聞いたマンリーコは思わず叫んでしまった。
「何という話だ!」
「あたしは自分の子供を焼き殺してしまったんだ!」
「それは事実なのかい、お母さん!」
「そうさ、本当の話なんだよ!」
それを話すアズチェーナの顔は鬼気迫るものがあった。まるで地獄の奥底で呻く幽鬼の様であった。だがここでマンリーコは一つのことに気付いた。
「待ってくれ」
「何だい?」
「母さんは今自分の子供を焼き殺してしまったと言ったね」
「ああ」
「じゃあ俺は一体何なんだい?」
「何だって?」
「いや。俺はじゃあ母さんの子供じゃないんじゃないかい?自分の子供を焼き殺したんだろう?」
「ああ」
「そうなると俺は・・・・・・」
「御前はあたしの子供だよ」
アズチェーナは彼に優しい声でそう語りかけた。
「けど今」
「疑うのかい?」
「いや」
そう言われると否定するしかなかった。
「御前はあたしの子供だよ。それは保証するよ」
「けれど今」
「あの時のことを思い出すとね、何が何かわからなくなってしまってね」
「そうだったの」
「ああ。だから安心おし。何時だって御前の優しい母さんだっただろう?」
「うん」
マンリーコは母の言葉に頷いた。
「あの時もそうだったじゃないか」
「ああ、そうだね」
「ペリリヤの戦場で倒れていた時、来ただろう」
「あの時は死んだと思ったよ」
マンリーコはそう答えた。
「あたしは心配だったんだ。御前が死んだんじゃないかと思ってね」
その顔には仁愛があった。優しい母親の顔になっていた。
「けれど生きていてほっとしたよ。それで御前をここに連れて来た」
「そして手当てをしてくれたね」
「そうさ。こんなことを本当の母親以外に誰がするんだい?」
「いや」
マンリーコは首を横に振った。
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