第四幕その七
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んだよ」
「馬鹿な」
伯爵は最初その言葉を信じなかった。
「そんな筈があるものか」
「あるのさ、それがねえ。そして」
まだ言う。
「マンリーコこそ・・・・・・」
その目にマンリーコが映っていた。既に炎に焼かれその姿は見えなくなっていたがはっきりと映っていた。
「伯爵、あんたの実の弟だったんだよ!」
「何!」
「母さん!」
アズチェーナは両手を大きく天に掲げて絶叫するようにして言う。
「仇はとったよ!今とったんだよ!」
そう叫び終えるとその場に崩れ落ちた。既に事切れていた。
「何ということだ・・・・・・」
伯爵はその亡骸をまず見た。
「生きているのは」
マンリーコの炎を見る。そしてレオノーラの青い亡骸が脳裏に浮かんだ。
「私だけか。私だけが・・・・・・」
絶望に苛まれながらも言葉を吐く。まるで血を吐くように。
「私だけが生きていられようか!」
伯爵は叫んだ。その絶望の叫びが暗闇の中の宮殿に響き渡った。その瞬間マンリーコを包んでいた炎もかき消えた。そこには灰だけが残っていた。
トロヴァトーレ 完
2005・2・20
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