第四章、その7の1:いろんな準備
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ふわぁっとした緩い欠伸が、可憐な唇から漏れる。口を押さえる事もしないで、パウリナは実にのんびりとした面持ちで暖かな木漏れ日を身をもって堪能する。かといって、自分に課せられた本来の役割を忘れた訳でもなく、かさかさとした枯葉が重なる地面を歩いていく。
(まったく、御主人も人が悪い。イル=フードの話を盗み聞きして来いだなんて・・・。というか、キーラちゃんも乗るとは思わなかったなぁ。貴族って怖いなぁ)
そう思いつつも、パウリナの口元には小さな笑みが見て取れる。邪な手法とはいえ、エルフの御偉方の私生活を覗くというのはパウリナにとって、興味をそそられずにはいられないのだ。また、自分達にはエルフの動向を調査するという大儀がある。バレなければ如何とでもなるというのが、彼女にやる気を触発させたのだ。
森の中心部にある、大きめの住居まで近付く。賢人の長たるイル=フードが住んでいる家だ。以前は訪れただけで中には入らせてもらえなかった。そして以前と同じように、建物の入り口には衛兵が直立不動の体勢をしており、警備に当たっていた。
(はいはい・・・いざこざは勘弁ですよっと・・・)
パウリナは彼らの目に留まらぬよう、そそくさと木の陰を伝って建物の裏手に回り込む。此方でも、警備中の衛兵がいたが数はたったの一人。彼の注意が他所に逸れれば容易に建物への接近が叶うであろう。事実パウリナも警備兵が場所を移そうと移動した直後、音も無く建物に近づいて、その軒下に潜り込む事が出来た。
鼠のように建物の下を這っていくと、上の方から段々と声が聞こえて来た。
『・・・だ。・・・とはなって・・・』
『・・・過ぎている!・・・!・・・では冬が・・・』
建物の丁度真ん中当たりで止まる。身体を仰向けにして、パウリナは耳を澄ましていく。
『だから何度も言っておろう!最早やってられん!』
『何を言ってるのだ!もっと早くやってもらえんと困る!』
『・・・なァ、いい加減遺跡に向かおうぜ。結構苛苛してきたんだけどよ』
『ならん、アダン殿。まだ危険が排除されきってないのだ!』
(おっ、聞こえて来た・・・ってかこれ誰の足?)
彼女が見上げる木の板に誰かが足を乗っけており、貧乏ゆすりをしているかのように小刻みに音を立てていた。口論は更に激しいものとなっていき、耳を澄まさなくても聞こえるくらいになっていく。
「いいか?私が森の農民まで動員して獣狩りに当たらせるというのも、そろそろ限界だ。つい先日、北地区での稲刈りをしていた農民が、盗賊の襲撃にあって殺害された。いいか、殺されたのだ!原因など知れておる!人目が少なかったからだ!警備兵の数も農民の数も少ない!これでは狙われるのは当然といえよう!」
「だから魔獣討伐を中止したいと?速めに切り上げたいと
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