第四章、その7の1:いろんな準備
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いた方がよいだろう」
「そうだ・・・貴様如きドワーフが、我等エルフの精神を弄ぶとは・・・!何たる屈辱か!恥を知れっ!」
「あ、そう。なら他の策でも考えればいいんじゃないか?尤も、もうとっくに手遅れだろうけどよ」
「・・・なんだと」
「この前な、西南の方に向けて数十人くらいの兵士達が森から出て行ったのを見たぞ。見た感じ、衛兵みたいな格好だったけど」
「西南・・・そういえば、西南にはニ=ベリ殿が直轄する前線基地があったな」
「っ・・・まさか、そんな・・・」
動揺の皺を目端に浮かべる老人を見て、アダンは嘲りに近い溜息を零して言う。
「あんたさ、イル=フードさん。現実を直視しようぜ?もうあんたの求心力なんて限りなく無に近いんだよ。口が上手いからって成り上がってきたんだろうけど、その癖に高望みし過ぎなんじゃねぇの?人間もエルフもドワーフも皆同じ、馬鹿の集まりなんだからよ」
「な、何を言うかっ、無礼な!!!」
「そりゃお前だろ?人の矜持や忠誠心を金や上っ面が綺麗な言葉だけで買うなんてよ、そっちこそ無礼極まるね。あんたがやってきたのは全部、何ら生産力の無い馬鹿馬鹿しい言葉遊びだけなんだよ。やれエルフのためだぁ、やれ大自然だぁ。そんなの俺でも出来るぜ?
エルフの中であんたがなんで人気だったか、大体察しがつくんだ。それはな、あんたの過激な口上が物珍しく見えたからだよ。こんな陰湿な領土の中で、あんたの言葉はえらく面白く聞こえた。ただそれだけだろ?んで、いざ支持を集めて調子に乗って勢力拡大したら、現実主義者のライバルとぶつかって、あんた思い知ったんだ。『これは絶対に勝てない』ってな」
「アダン殿・・・そろそろやめろ。話して良い事と悪い事がーーー」
「だがあんたはっ、やめようともしなかったな?なぜだか分かるか?下手に派閥の棟梁なんかになって、自尊心が膨れ上がったからだよ。自分が人に劣るだなんて認めたくなかった。だからいままで以上に過激になって、戦いを煽っているんだ。そうじゃなきゃ、今でも派閥の頭領なんてやってないだろ?」
イル=フードは何も言わず、顔を怒気の赤に染めて瞳を凄ませる。反論が碌に返せぬのは、アダンの謗りに覚えがあるからであろうか。一方でアダンが口走った言葉は彼の本心から浮かんだ感想では無く、寧ろ当てずっぽうの域に入るものである。だが彼は本心で無いから余計に酔えるともいいたげに、募り募った欲求不満をぶつけるように、演説がかった口調で言う。口舌の輩の矜持を傷つける言葉を。
「きっと、俺の知らない所じゃ自分に都合のいい事を言いふらしまくってんだろ?それこそエルフの精神なんて持ち出してよ。どっちが名誉ってもんを傷つけているんだか」
「っっっっ、貴様ぁっ!!!」
我慢できぬとばかりにくわっと目を見開き、イル=フードは
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