第四章、その7の1:いろんな準備
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言うのか?それこそ論外だ。私は貴殿の困窮した状況を救ってやった、いわば救世主なのだぞ。なれば貴殿は救世主の命に従順であるべきなのだ!」
「ならん!幾らなんでもこれ以上は無理だ!作物の収穫、森の警備、内外に対する威圧!全てに対して人員が欠乏している!私の求心力が日に日に落ち込んでおるのだ!最早金銭だけでは動けん!」
怒声を張り上げたイル=フードは、屋内にまで上がり込んできた金銭提供者である人間、チェスターを激しく睨む。チェスターと同様に怒りを孕んだ目をしており、それをアダンは椅子に座りながら見詰めて貧乏ゆすりをしているという格好である。
魔獣討伐を依頼して早一月を過ぎた程度であろうか。降霜の月まで時間は掛かるというイル=フードの説明は正しく、未だに討伐隊は帰還していない。チェスター等とてそれは理解していたが、自由な行動を認められず数月も篭るという行為は想像以上の苦行であり、堪えかねて討伐の催促をしに来たのだ。だがイル=フードとて貴重な人員を本来は要らぬ問題で割くというのが気に入らぬ様子であり、こうして口論となっているのである。
更に口火を切ろうとしたチェスターより先に、アダンが鋭く言い放つ。
「なら、巫女さんを使えばいいんじゃねぇか?」
「!?ば、莫迦か、貴様は!!不敬極まる発言だぞ!!撤回しろ!!」
「いいやしないね。何せこいつは、あんたにとっても利に適う話になるんだからよ」
「・・・アダン殿、どういう事かな?」
「なぁチェスター、エルフの精神的柱ってのが巫女さんなんだろ?誰もが敬う、大自然様の代理人、だっけか。そんな巫女さんの言葉ってもん、普通は信じない筈無いよな?誰もが大自然の神々の言葉だって受け止めるだろ?」
「まさか、貴様はっ!」
「あ、もう読めたか?そうだ、イル=フード。あんたが巫女の言葉を預かったって名目で、エルフに命令すればいいんだよ。『ニ=ベリではなく、俺の命令こそが大自然の意思である。従え』って具合にな」
その提案は、アダンにとっての利には適っていよう。巫女を使用すればイル=フードの懸念たる、求心力の維持という問題に蹴りがつく上に、もしかしたら今まで以上に魔獣討伐における動員が可能になるかもしれないのだから。
だがそれがエルフにとってどのようなものとなるのか、チェスターが嗜めるように言ってきた。
「なぁ、アダン殿。私とてそれの実行を一度ならず考えはしたぞ?だがそれはあくまで強攻策であり、最終手段なのだ」
「へぇ、そうなのかい?」
「当たり前だ。いわばエルフの矜持や信仰、自尊心に手を加えるのと一緒だ。巫女殿はそもそも祭事における行為のみを行い、政治には口を突っ込まん。それが因習なのだ。下手にそれを濫用すれば、我等の存在を勘付かれるだけでなく、憎悪の剣を翳される事すら考えられる。やめてお
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