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トロヴァトーレ
第三幕その六
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第三幕その六

「あのオルガンの曲を聴いて欲しい」
 彼はレオノーラにそう囁いた。
「あれは私達を祝福する神の御声だ」
「神の」
「そうだ。だから貴女は心配することはない。神の御加護があるのだから」
「はい」
「そしてそれは私にもある。だから気をしっかりと持ってくれ。いいね」
「わかりました」
 レオノーラはそう答えて身を彼の胸に預けた。彼はそんな彼女を受け入れ強く抱き締めた。そして互いの絆を確かめ合った。しかしその時だった。
「マンリーコ!」
 ルイスが慌てた様子で広間にやって来た。
「どうした!?」
 マンリーコはそれを見てレオノーラから離れてそれに応えた。
「大変なことが起こった」
「敵が攻めて来たのか。夜襲か!?」
「いおや、違う。バルコニーからも見える。見てくれ」
「バルコニーから!?」
「そうだ、早く。気を落ち着けてな」
「あ、ああ」
 ルイスの唯ならぬ様子に戸惑いを覚えていた。しかし彼は何が何だかわからず彼に言われるままバルコニーに出た。
レオノーラもそれに従った。
「あそこだ」
 ルイスはある場所を指差した。
「あそこか」
「ああ」
 マンリーコはそこに目をやった。そしてその顔を見る見る紅潮させていった。
「これは一体どういうことだ!」
「マンリーコ、見たな!」
「ああ。悪漢共め、何ということを!」
 最早怒りで我を失っていた。レオノーラはそんな彼を恐ろしげに見ていた。
「あの」
「どうした!?」
 彼はその紅潮した顔をレオノーラに向けた。闇の中でもわかる程興奮していた。
「どうなされたのですか、そんなに興奮されて」
「怒るのも道理」
 声までも怒りに震えていた。
「あれが見えるだろうか」
 そして彼も指差した。レオノーラに見せる為だ。
「はい。あれは」
「処刑台だ。火炙りにする為の。そしてそこに引き立てられているあの女性は」
「はい」
 無数の篝火の中に一人の女がいた。ジプシーの女だ。
「私の母なのだ!」
「何と!」
 それを聞いたレオノーラの顔も驚きで今にも割れそうになった。
「あそこにいるのは私の母なのだ!今殺されようとしているのだ!」
「そんな、何ということ!」
「おのれ、祖母だけでなく母まで殺そうというのか!」
 マンリーコは怒りを爆発させた。そして感情のおもむくままに叫んだ。
「ルイス!」
「ああ!」
 ルイスもそれに応えた。
「すぐに兵を集めてくれ!全軍だ!」
「全軍か!」
「そうだ!そして奴等を皆殺しにする。いいな!」
「わかった、暫く待っていろ!」
「ああ!」
 ルイスはすぐに姿を消した。そしてマンリーコは怒りに震える目でその処刑台を見ていた。
「あの処刑台に灯される赤い邪悪な炎が俺の身体にも灯る。そし
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